毛様体とはーー目の遠近調節のしくみを具体的に説明。
私たちが遠くの物を見たり、近くの物を見たりした場合、自然と遠近調節されピントが合うようになっています。つまり、水晶体を厚くしたり薄くしたりして網膜上に像を結ぶようなしくみをもっています。
遠近調節に主にかかわっているのは、厚みを変えることで屈折率を変える「水晶体」と、それにつながっている「毛様体」の筋肉と、毛様体から出て水晶体を引っ張る「チン小帯」という結合組織です。
具体的にいうと、
●近くを見るとき
毛様体筋が収縮(緊張)して、チン小帯がゆるみ、水晶体が厚くなる。
●遠くを見るとき
毛様体筋が弛緩して、チン小帯が引っ張られて、水晶体が薄くなる。
これでは、理解しにくいと思いますので、もっと具体的に書きましょう。
「毛様体筋」は、輪のような形になった筋肉を
収縮・膨張してピント調節。
この毛様体筋は筋肉ですが、実は環状の筋肉なのです。
筋肉というと、骨格筋のように直線的な筋肉をイメージすることが多いですが、そのような直線的な筋肉は収縮(緊張)すると長さは短くなり、弛緩すると長くなります。
では毛様体筋のような環状の筋肉が収縮、弛緩するとどのようになるのでしょうか。
環状の筋肉が収縮すると、直線の長さに相当する円周が短くなります。つまり筋肉によって形づくられている円が小さくなるのです。そこにつながっているチン小帯の状態も変わります。
毛様筋が収縮すると円が小さくなり、チン小帯は引っ張られることがなくなりゆるみます。チン小帯とつながっている水晶体は外側に引っ張られることがなくなり、水晶体がもつ弾性で厚みを厚くします。結果、焦点距離が短くなって近くを見ることができるようになるのです。
逆に毛様体筋が弛緩すると円周が長くなり、形づくられている円も大きくなります。チン小帯は外側に引っ張られ、水晶体の厚みが薄くなり、焦点距離は長くなって、遠くを見ることができるようになるのです。
近くのものを見るとき、毛様体筋が収縮して、毛様体の環状の輪が小さくなり、チン小帯がゆるみ、水晶体はそれ自体の弾性で厚くなる。
遠くを見るときは、毛様体が弛緩して輪が大きくなるので、チン小帯が外側に引っ張られ、結果、水晶体は薄くなる。
注意)このサイトでは、「近くを見るとき→毛様体が緊張して収縮、高さが高くなり、チン小帯がゆるむので水晶体はそれ自体の弾性で厚くなる」と説明していますが、これは理解しやすいようにと書いており、正しくは前記の通りです。毛様体が環状の筋肉だということは、具体的に説明しないと理解しにくいのです。
目は人体で最も高度に進化した精密機械。
毛様体筋は、近くのものを見続けると収縮(緊張)が続き、目が疲れるのです。逆に遠くを見るときは弛緩しますから、疲れない。
そのように目はつくられているのです。
これを読んでいただいた、あなたに質問です。目の水晶体の大きさ(直径)はどれくらいだと思いますか? 実は、水晶体の大きさ(直径)は約9ミリです。1センチもないんです。厚みは、調節により異なりますが4~5ミリです。こんな小さなレンズを毛様体筋が収縮・弛緩して厚み調節していたんです。
目は人体で最も高度に進化した精密機械。最近、目を酷使していませんか? 大事にしましょう!