子どもの目の病気「弱視」
矯正しても1.0まで視力が出ない状態を「弱視」という。
「弱視」という言葉をよく聞きますが、その意味を知っていますか? 弱視というと、目が非常に不自由な人のことをいうのだと思っていませんか?
眼科で使われる弱視は病名を指し、子どもの視力の発達が何かの原因で妨げられてしまう病気です。
人間の目は、生まれた時からハッキリと見えているわけではありません。
眼球の大きさは、新生児は大人と違っても、構造的にはほぼ完成していますが、機能的には未熟な状態です。
生後間もない赤ちゃんの視力は0.01くらいで、明るいか暗いかがわかる程度です。生後2~3ヵ月になると、おもちゃを見つめたり、お母さんの笑顔に応えて笑うようになったりなど、両目で立体的にとらえる機能が発達します。1年後には視力が0.2前後になり、4~5歳で1.0以上となって視力はほぼ完成します。10歳くらいまでには、視覚機能は多くのものを見て生活の経験を積むことで発達し、成人と同じレベルに達するのです。
こうした成長過程で、なんらかの原因で視力の成長が止まってしまい、メガネやコンタクトレンズをつけて矯正しても1.0まで視力が出ない状態を「弱視」といいます。裸眼視力が1.0以下でも、メガネをかけると1.0以上の視力が出れば、弱視とはいいません。
目の発達途上で、視覚刺激が不十分で、脳の視覚中枢が十分に発達していないためにおきる低視力を弱視といいうのです。感受性の高い幼少期に視覚刺激を与えることが重要です。弱視の原因には、さまざまなことが考えられます。
▶︎1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳の子どもの視力はどれくらい? につていはこちらをクリック
弱視の原因は?
①斜視
通常、物を見るときは、左右の目が見ようとするものの方向に向いています。それが、片方の目は見ようとする物を見ているのに、もう片方の目は目標物とは違う方向を向いている、これを「斜視」といいます。斜視になっている目のほうを使わなくなることで、視力が出なくなり弱視になるのです。
▶︎子どもの斜視について詳しく知りたい方はこちらをクリック
②屈折異常
強度近視や遠視、乱視は、ハッキリとした像を網膜に結べないため、弱視になる場合があります。
③形態覚の遮断
視力が発達される時期(感受性期)の3カ月~3歳の時期に、眼瞼下垂(まぶたが下がって瞳にかかっている状態)や、先天白内障 などで網膜に十分な光刺激が届かないと視力の発達が遅れてしまいます。 また、眼帯などでしばらく目を使わずにいるとそれだけで弱視になることもあります。 これを、形態覚遮断弱視(けいたいかくしゃだんじゃくし)といいます。
そのため、視力の発育過程にある乳幼児期に眼帯をすることは、数日でも弱視になることがあるので、安易に使用することは危険です。
④不同視
左右の目で近視、遠視、乱視の度が極端に違うと、度の強いほうの目は使われず、弱視になることがあります。
3歳くらいまでに弱視を発見できると、視力はかなり回復!
《弱視の症状》
ものが見えにくいので、よく見ようとしてテレビに近づいたり、目を細めて見たり、いつも頭を傾けて見えやすい体勢をとっています。また、片目がよく見える場合は気づきにくいので、見えるほうの目を隠した状態でどれくらい見えているのか確認するとよいでしょう。
▶︎家庭でも3歳~6歳児の視力を調べられる「ランドルト環字ひとつ視力検査表」はこちらをクリック
《治療法》
視力は9~10歳くらいまで成長していくので、早い時期に治療をおこなえば治る可能性が高くなります。3歳くらいまでに弱視を発見できると、視力はかなり回復します。
●調節麻痺作用のある散瞳薬を使った検査で正確な度数を割り出し、適切なメガネをかけます。
視力に左右差のある場合、良いほうの目(健眼)にアイパッチをすることで悪い方の目(弱視眼)を強制的に使わせて視力の発達を促すという方法です。
アイパッチは、一日に何時間くらいするか、いつまで続けるのか、は小児の年齢や視力値などにより一人ひとりで異なります。同じ視力値でも年齢が低ければアイパッチの時間や期間は短くて済みます。