夏の暑い季節になると「夏バテ」により体調不良を経験する方が多くいますが、実は目にも「夏バテ」と呼ばれる症状が現れることがあります。本記事では、医学的根拠に基づいて「目の夏バテ」の症状、原因、対策について解説します。
「目の夏バテ」とは
「目の夏バテ」とは、夏特有の環境要因により目に疲労や不快感が生じる状態を指します。主な症状として、充血や眼のごろつき感、涙が出る、目の痛みやまぶしさといった症状があります。熱い陽射し、冷房、プールでの眼病感染など、夏は眼に負担がかかる季節であることが原因とされています。
主な症状
目の夏バテで現れる症状は以下の通りです:
- 充血: 目の血管が拡張し、白目が赤くなる
- 異物感・ごろつき感: 目の中に何かが入っているような感覚
- 流涙: 涙が過剰に分泌される
- 眼痛: 目やその周辺に痛みを感じる
- まぶしさ: 光に対する過敏性の増加
- 眼精疲労: 目の疲れが休息しても回復しない状態
3つの主要原因
1. 紫外線による影響
医学的根拠
紫外線は皮膚と同様に目にもたくさんの悪影響を及ぼします。紫外線は結膜(白目)や角膜(黒目)、水晶体で吸収されます。そして、日差しが強い日などに大量の紫外線を短期間に浴びると、結膜充血や紫外線角膜炎などの急性疾患を起こします。
紫外線は赤道に近いほど強く、佐々木教授が石川県在住の日本人と、アフリカの赤道部に位置するタンザニアの小中学生、高校生を対象に行った調査では、初期の瞼裂斑の有病率はタンザニア人が著しく高いことが分かりました。
紫外線が引き起こす眼疾患
- 紫外線角膜炎(雪目): スキーや雪山登山で、雪面に反射した強い紫外線に目がさらされたときに起こる症状です。角膜の表面に細かい傷がつき、ごろつき、涙、まぶしさ、結膜の充血、激しい痛み等を伴います
- 翼状片: 白目が目の鼻側から黒目に食い込んでくる状態です。紫外線を浴びることにより白目と黒目の境界が傷つき、その修復の過程で白目の細胞が異常に増殖するために、起こると考えられています
- 白内障: 失明原因で世界トップの白内障も紫外線の影響を受けます。白内障は、目の水晶体の濁りにより、光が通りづらくなり見えにくくなる病気です。紫外線は目のレンズの役割をする水晶体に障害を生じ、水晶体を構成するタンパク質が濁る原因になります
2. エアコンによるドライアイ
医学的根拠
エアコンもドライアイを引き起こす原因のひとつです。エアコンを長時間使用すると、肌が乾燥するのと同じで、目も乾燥します。目を守る働きをする涙は、風や湿度などの環境に大きく影響を受けます。エアコンがドライアイの原因になるのは、湿度が低下する、風があたることなどで涙が蒸発しやすくなるからです。
低湿度や低温は、涙の蒸発を亢進させるのでドライアイを悪化させます。冬場になるとドライアイが悪化するのはそのためですが、冬以外でも、エアコンの効き過ぎや送風を直接受けるような環境はよくありません。
ドライアイの症状と影響
ドライアイになると、目の乾きやかすみ、目の痛み、目がゴロゴロする、目ヤニが出るなどの症状が現れます。現在日本でのドライアイの患者数は2,200万人とも言われており、私たちに取って身近な目の病気です。
3. スマートフォン・デジタル機器の使用(VDT症候群)
医学的根拠
パソコンやスマートフォン(スマホ)など、身の回りにあふれる機器を長時間使用することで、眼精疲労や頭痛、眼の痛みやかすみ、首や肩のこり、ドライアイなどが増えています。VDT症候群またはIT眼症と呼ばれ、最近ではリモートワークの機会増や子どものスマホゲームの長時間化により、症状を訴える人が増えてきた現代病のひとつです。
これまでなんの症状もなかったのに、急激に眼が内側に寄ってしまう急性内斜視の患者様が増加しています。特に若い年代の方に増えていて、主にスマートフォンの使いすぎが原因とされています。急性内斜視を別名、スマホ内斜視と呼ばれ、1日のうち長時間連続でスマホを使い続けた人に多く見られます。
VDT症候群による症状
眼症状として:
- 眼精疲労
- ドライアイ
- 充血
- かすみ目
- 視力低下
身体症状として:
- 首・肩のこり
- 頭痛
- 背中の痛み
- 手指のしびれ
精神症状として:
- 不安感
- イライラ
- 食欲不振
- 抑うつ状態
- 不眠
対策と予防法
紫外線対策
帽子とめがねを併用することで、十分に紫外線を減らせます。ただし、紫外線は地面などに反射して横や下からも入ってくるので、全方向から紫外線を防御しないといけません。
具体的な対策:
- UVカット機能付きサングラス: 色の濃いレンズは瞳孔が普段より大きく開きます。かえって、たくさんの紫外線が目の中に入る場合があるので要注意
- つばの広い帽子: 麦わら帽子のように、帽子のつばの幅が7センチ以上だと紫外線カット効果が高い。カット率は20~70%ほど
- UVカットコンタクトレンズ: 素材に紫外線吸収剤が含まれているため、紫外線をカットできる。黒目全体と白目の一部を覆うコンタクトレンズは、角膜と角膜に隣接する結膜への紫外線の透過を低減する
エアコン使用時の対策
エアコンの使用中は湿度に注意し、加湿器を積極的に使って、常時50%前後をキープするようにしましょう。加湿器がない場合は、濡れタオルを干しておくだけでも効果があります。また、エアコンの風が顔に直接あたらないように風向きを調節し、乾燥から目を守りましょう。
スマートフォン・VDT作業対策
厚生労働省のガイドラインでは、1時間以上VDT作業を継続しないこと、1時間の作業に15分休憩を取ることが示されています。
具体的な対策:
- 20-20-20ルール: 20分ごとに20フィート(約6メートル)先を20秒間見る
- 適切な作業距離: スマートフォンの使用時には距離をなるべく離して、ときどき遠方を眺めることが有効とされています。だいたい30㎝離して、10分使用するごとに遠方を眺めるのが理想
- 画面の位置調整: パソコン作業ではモニターが目線より上にあると、目が大きく開いてより乾燥しやすくなります。モニターはやや目線が下になる位置に設定すれば、ドライアイの予防にもつながります
受診の目安
目ヤニが見られる場合の受診の目安としては、目ヤニの量が多く数日間改善しない場合、目のかゆみや痛み、視力の低下が伴う場合、また目ヤニの色がいつもと違う場合です。これらの症状は治療が必要な感染症などの可能性があり、早めに眼科専門医の診察を受けることをお勧めします。
まとめ
「目の夏バテ」は、紫外線、エアコンによる乾燥、デジタル機器の長時間使用という3つの主要因が複合的に作用して起こる現代的な眼疾患です。適切な予防対策を講じることで症状の軽減が期待できますが、症状が持続する場合は眼科専門医による診察を受けることが重要です。
監修に関する注記: 本記事は医学的文献および眼科専門医による情報に基づいて作成されています。症状が気になる場合は、必ず眼科専門医にご相談ください。
参考文献・記事URL一覧
学会・公的機関
大学・研究機関
眼科専門クリニック
- 池袋サンシャイン通り眼科診療所 – 紫外線が眼に与える影響
- 中村眼科クリニック – 目の夏バテについて
- 東戸塚田園眼科クリニック – 目も「夏バテ」?
- 新宿コスモ眼科 – IT眼症・VDT症候群
- 久が原眼科 – 眼精疲労・VDT症候群
- 瑞江あかり眼科 – ドライアイ/VDT症候群
- 岡本眼科 – 紫外線と目の病気
- 平田眼科 – 紫外線とUVインデックス