近視の度を進めさせないために光のビタミン「バイオレットライト」を浴びよう!
ここでは、子どもを外で遊ばせ、太陽の光を浴びることで、なぜ近視進行を抑えられるのかについて詳しく紹介。さらに、軽度(弱度)の近視であっても、子どもにとっては、将来、さまざまな目の病気に罹かかりやすくなることを解説。例えば、軽度の近視であっても、近視がない場合と比較して、緑内障になるリスクは4倍も高くなるのです。
太陽の光には、近視進行をおさえる光「バイオレットライト」が含まれていた
「外で過ごす時間が長い子どもほど近視になりにく」というデータがあることをごぞんじですか? オーストラリアのシドニーとシンガポールに住む中華系の6歳と7歳の子どもたちを比較したところ、親の近視の割合はほぼ同じ(少なくとも父親か母親の約70%が近視)だったにもかかわらず、子どもの近視の割合はシンガポール(29.1%)のほうがシドニー(3.3%)よりも8倍以上多いことがわかりました。シドニーの子どもたちは1週間に平均14時間外で過ごしていましたが、シンガポールの子どもたちは1週間に平均3時間しか過ごしていませんでした。
こうした、屋外活動が子どもの近視進行をおさえることは、世界のさまざまな研究チームにより報告されてきました。ところが、屋外活動の何が近視進行抑制に効いているのかは分かりませんでした。そんな中、2016年12月、慶應義塾大学医学部の研究チームが、太陽光に含まれる「バイオレットライト」が近視の進行をおさえる可能性があることを、世界で初めて発表したのです。この研究結果は、医学雑誌『EBioMedicine』の2017年2月号に掲載。「近視の発症や進行のメカニズム解明、ならびに新しい予防法・治療へ向けた画期的発見」として話題になったのです。
2つの研究結果により、バイオレットライトの目への近視抑制の効果を確認
では、近視予防のカギを握るバイオレットライトとは、いったいどういうものなのでしょうか?
太陽の光は、人間の目が感知できる光の「可視光」、感知できない「可視光以外」の2つに大きくわけられます。太陽の光は、さまざまな波長の集合体で、ガラスでできた三角形の角柱(プリズム)に通すと屈折によって様々な色に分離されます。虹のような赤→橙→黄→緑→青→藍→紫と色が表れます。このうち、紫色の部分がバイオレットライトです。
バイオレットライトとは、波長360~400nm(ナノメートル)の紫色の光です。
慶應義塾大学医学部の研究チームは、このバイオレットライトを浴びることで近視が実際におさえられるかどうかについて、2つの研究を行っています。
ひとつは実験モデルとしてヒヨコを使用し、バイオレットライトを当てる群と、当てない群にわけて研究したところ、バイオレットライトを当てたほうの群で有意に近視進行が抑制されました。
もうひとつはヒトの臨床データによるもので、コンタクトレンズで視力矯正をしている13歳~18歳の子どもを対象にした研究です。コンタクトレンズには、バイオレットライトを通すものと、一部をカットするものがあります。バイオレットライトの一部をカットするコンタクトレンズを装用している子どもの眼軸長の伸びは1年で0.19mmだったのに対し、バイオレットライトを通すレンズを装用している子どもの眼軸長の伸びは、1年で0.14mmでした。つまり、バイオレットライトが目により多く入るコンタクトレンズを装用していた子どものほうが眼軸長の伸びが少なく、近視の進行抑制に効果がある可能性が示唆されたのです。
角膜から網膜までの長さを「眼軸長(がんじくちょう)」という。日本人の成人の場合、眼軸長の平均は約24mm程度。この長さが数mmでも長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまい、遠くが見えにくくなる。これを「軸性(じくせい)近視」という。近視の多くが、この軸性近視なのだ。
紫外線から守ろうとしすぎたことで、目に良いバイオレットライトまで排除
近視の進行をおさえる可能性があるバイオレットライト。太陽光に含まれる光だから、毎日自然に浴びているはず、と思っていませんか? ところが、今の私たちの生活環境は、バイオレットライトが不足しがちな環境になっているのです。
学校、病院など多くの建物の窓には、紫外線を遮断するUV(紫外線)カットガラスが用いられています。また、一般家庭で使われる窓ガラスにも、車にも紫外線を通さないものがあります。こうしたUVカットガラスのほとんどが、波長400nm以下の光を遮断します。そのため、UVカットガラスは、波長360~400nmのバイオレットライトまでカットしてしまっているのです。
また、室内の照明に使われるLEDライト、蛍光灯にもバイオレットライトは含まれていないため、多くの人がバイオレットライトを十分に浴びれていないのです。
さらに、怖いことに、一般的なメガネに使用されているレンズは、バイオレットライトを通しません。そうです、メガネ越しに光を浴びても、バイオレットライトは目に十分届きません。「メガネをかけはじめると、近視の進行がはやくなる」ようだと一部でいわれているのは、これが原因ではないかと指摘する研究者もいるのです。
コンタクトレンズにも、バイオレットライトを完全に通すものと、一部しか通さないものがあります。
効果的にバイオレットライトを浴びるためのポイントを紹介
屋外で過ごす時間が減り、室内でもバイオレットライトがカットされている生活環境のなかにいる私たちの暮らし。近視予防の視点からは、このバイオレットライトをどう浴びるかが大切です。
とくに子どもの近視予防では、視力検査で0.7とか0.6などといわれた近視のなり始めが、とくに重要な時期です。1日2時間を目安に屋外で過ごすことがおすすめです。メガネをしているのなら、休日は、メガネを外して屋外で過ごすようにしましょう。
しかし、1日2時間屋外で過ごすのは意外と難しいものです。効果的にバイオレットライトを浴びるためのポイントを紹介します。
- 熱中症予防のためにも直射日光は避けましょう。
バイオレットライトを浴びるためだからといっても、直射日光に当たる必要はありません。光は反射するため、日陰にいてもバイオレットライトを浴びることができます。日差しが強い時期は、紫外線の浴びすぎを避けるためにも、帽子などを着用し、皮膚に日焼け止めを塗るなど紫外線対策を忘れないようにしましょう。 - 曇りの日でも、バイオレットライトは浴びられます。
空が暗く感じられる曇りの日だから、外に出ても意味がない、と思いがちですが大丈夫です。曇りの日でもバイオレットライトは射し込んでいます。日中はなるべく屋外で活動する時間をとりましょう。 - 子どもを屋外で遊ばせるときは午前中に。
外で過ごすのに理想の時間帯は、朝10時から午後4時頃まで。夕方になるとバイオレットライトは減ってしまいます。夕方の赤い光にはバイオレットライトは含まれていません。子どもを外で遊ばせる場合は、バイオレットライトが多く含まれる午前中がおすすめ。 - UVカット窓ガラスを採用している場合は窓を開けましょう。
屋外で2時間過ごすことが難しい場合は、できるだけ日中は窓際で過ごすこと。UVカット仕様のガラスを採用しているときは、窓を開けて太陽光を直接取り入れるようにしましょう。
もちろん、大人になってもバイオレットライトは必要です。屋外で過ごすことは、運動不足解消にもつながり、健康促進にもなります。
以上は、メマモル「ME-MAMORU」の情報をまとめたものです。
https://healthcare.jins.com/memamoru/
メマモル「ME-MAMORU」は、子どもの視力低下を心配する親御さんに向けて、「子どもの目の健康を守る」ための情報を発信しているサイトです。近視研究で注目されている「近視進行抑制とバイオレットライトの関係」を中心にさまざまな情報を提供しています。
子どもの近視について、真剣に考えてみませんか!
近視には「遺伝因子」と「環境因子」の両方が関与しています。環境要因は、ご存知の通り、パソコンやタブレット、スマートフォンが普及して、近くを見続ける時間が増え、近視化が進むことなどです。
遺伝因子としては、
●近視の親が一人いる場合、両親ともに近視ではない子どもに比べて、子どもの近視のリスクは3倍。
●両親が2人とも近視である場合、子どもの近視リスクは6倍。
●両親の一方または両方が強度近視の場合、子どもも近視を発症し、強度近視に進む可能性が高くなる。
という研究報告がありますが、その報告内容を詳細に確認していいないため、真贋の判断はつきません。いえることは、自身が近視である親御さんは、子どもに目に悪い生活をさせないよう、細心の注意を払うことです。
近視は、子どもの将来の目の健康に大きく影響します。
メガネなどで矯正すれば「見えるようになる」と、近視を軽く考えがちですが、現在、疫学データの蓄積から、近視が将来の目の病気の罹患率に与える影響が大きいことがわかっています。
近視の程度により、将来、さまざまな目の病気に罹かかりやすくなるのです。下の表で示しているように、軽度(弱度)の近視であっても、近視がない場合と比較して、緑内障になるリスクは4倍も高くなります。生涯にわたって良い視力を維持するためには、小児の頃から、近視にならないようにして、近視になっても進行を予防することが、とても大切なのです。