あなたは、強度近視、病的近視という言葉を知っていますか?

視力回復

失明や視力障害にいたる可能性のある強度近視・病的近視とは

あなたは、強度近視、病的近視という言葉を知っていますか?

眼軸長による強度近視

あなたは、自分の近視の度数を知っていますか?

  • あなたは自分の近視の度数を知っていますか?
  • 強度近視が失明の原因になることを知っていますか?

と、質問されたらあなたはどう答えますか?

バイエル薬品株式会社(本社:大阪市)と参天製薬株式会社(本社:大阪市)は、2014 年 11 月、近視用のメガネやコンタクトレンズを使用している 1,000 名を対象に意識調査を実施しています。

調査の結果、自分の近視の度数を把握していない人が 70%以上でした。また、近視の人でも「強度近視」という言葉を聞いたことがある人はわずか29.3%。強度近視が失明の原因になることは、90.2%が「知らない」と回答しました。

さらに、近視を診てもらうために眼科を定期受診している人は全体の 21.5%で、“近視のリスク”を意識して通院している人は少数であることがわかりました。

近視の人の多くが自分の近視度数を把握していないことや、眼科の定期受診を受けていない背景には、“近視がもつリスク”に対する認知度の低さがあることがうかがえます。

病的近視の状態かどうかを、自己チェックしてみよう。

では、強度近視とはどれくらいをいうのでしょうか?  視力は一般的に3~5メートル離れた位置からランドルド環(Cのマーク)を見て、どのレベルの小さなランドルド環を区別できるかという形で判定します。「1.0」の部分が見えれば視力1.0、「0.5」の部分が見えれば視力0.5です。

しかし、本当に正しい視力の数値は『ディオプトリー(D)』という値で表され、この値によって近視の度合い(軽度近視、中等度近視、強度近視)を判断します。

ディオプトリーとは屈折度数のことで以下の式で算出されます。

【屈折度数(D)=1÷焦点距離(m)】

近視の場合、凹レンズで矯正されます。その凹レンズはマイナスのため、近視の度数表示は「マイナスD」で表します。正視の場合は±0、遠視ではプラスの値となります。日本では、マイナス3D未満を軽度近視、マイナス3D以上~マイナス6D未満を中等度近視、マイナス6D以上を強度近視とすることが多いようです。また、マイナス8Dを超えた強度近視が原因で、目の障害や失明に至ることを病的近視と呼びます。

近視のレベルとディオプトリー(屈折度数)

近視のレベル ディオプトリー(屈折度数)
軽度近視 −3D未満
中等度近視 −3D以上 −6D未満
強度近視 −6D以上 −10D未満
最強度近視 −10D以上

※近視のレベルは、なぜか判断基準があいまいで、−8Dを超えるもの強度近視としている場合もあります。

【裸眼視力とディオプトリー】屈折度数と裸眼視力の関係はあいまいで、例えばー1.0Dだと裸眼視力はいくらとは判断できません。下記の表は、あくまで目安となるものです。

屈折度数

ディオプトリー 

裸眼視力の範囲

(目安)

屈折度数

ディオプトリー

裸眼視力の範囲

(目安)

-0.25D 1.2~0.8 -3.0D 0.3~0.04
-0.50D 1.0~0.5 -3.5D 0.3~0.04
-0.75D 1.0~0.4 -4.0D 0.2~0.04
-1.0D 0.9~0.2 -4.5D 0.2~0.04
-1.25D 0.8~0.1 -5.0D 0.1~0.02
-1.5D 0.8~0.1 -6.0D 0.1~0.02
-1.75D 0.7~0.08 -7.0D 0.06~0.02
-2.0D 0.7~0.08 -8.0D 0.04~0.01
-2.5D 0.5~0.06
病的近視度をチェック

病的近視のレベルになっているかどうかは、次の方法で自己チェックしてみてください。
やり方は簡単です。人さし指を立てて指の腹を自分に向け、そのまま顔に近づけます。裸眼で、目を細めずに見たとき、指紋まではっきり見える位置が眼前12.5センチであればマイナス8D。それより近づけないと見えない場合、病的近視になっている恐れがあるのです。

「-3.00Dの近視」の人の焦点距離(遠点)は「眼前(符号がマイナスなので)0.333m」ということになります。裸眼の時、眼前0.333mのものはハッキリ見えるけれど、それよりも遠くにあるものは距離が遠くなるほどぼやけてしまうということです。

強度近視になぜなるのか?

もし、20代や30代になっても近視が進行しているのなら、それは「強度近視」状態といえます。

眼のなかには、眼のレンズである水晶体を調整する「毛様体」がありますが、実はこの毛様体にはもうひとつの働きがあります。房水(ぼうすい)という透明な液体を分泌する細胞があるのです。通常は、ここから眼のなかに房水が適度に分泌されることによって、眼の中の眼圧が保たれています。つまり、この場所が眼の圧を一定にして、眼圧を高くもなく低くもないようにしているのです。

これがうまくコントロールできずに房水が必要以上に分泌されると、眼圧が相対的に高くなることで眼に圧力がかかり、眼がどんどん長くなってしまいます。つまり、眼軸長[(がんじくちょう)=眼球の前後方向の長さ]が伸び、これが強度近視につながるのです。

失明や視力障害にいたる可能性のある強度近視・病的近視とは

強度近視の人は正常な人に比べ、緑内障の発症率が3倍以上

実は、強度近視には定まった診断基準がありません。マイナス6D以上を強度近視にするというのは目安であり、眼科ではほかの検査も行い診断します。

その一つが眼軸長[(がんじくちょう)=眼球の前後方向の長さ]の測定です。成人の眼球は直径24ミリ弱の球形ですが、強度近視の目は眼軸が伸びてラグビーボール状になっていることが多いのです。強度近視とされるのは、一般に27ミリ以上で、長い場合は40ミリの人もいます。

眼軸長がなぜ伸びるのか、はっきりわかっていません。強度近視になり、眼軸が長い状態で何年も経つうちに、眼球の後部がぽこっと飛び出す「後部ぶどう腫」を生じることがあります。

後部ぶどう種の解説図

また眼軸長が長くなることで、網膜が突っ張って網膜剝離(はくり)が起こったり、網膜の中心部にあたる黄斑部が伸びて合併症が起きたりします。黄斑部に出血が起きると、突然の視力低下やものがゆがんで見えるなどの症状が起こります。このレベルなると「病的近視」と呼ばれ、強い近視が原因で目の障害や失明に至ることもあるのです。

病的近視の合併症としては、

●黄斑部出血

高齢者に多い「近視性脈絡膜(みゃくらくまく)新生血管」と、20~40代に多い「単純出血」が原因になります。

「近視性脈絡膜新生血管」は、脈絡膜が引き伸ばされてもろい血管が新しくでき、網膜の下に伸びて増殖する病気です。物が歪んで見える「変視症」などが起こり、進行すると重篤(じゅうとく)な視力低下にいたります。

「単純出血」は、脈絡膜が引っ張られて薄くなり、わずかに眼底に出血するものです。出血場所によっては、見たいところが見えない「暗点」や視力低下が見られます。数カ月で自然に改善することが多いのですが、その後、脈絡膜新生血管を起こすこともあるので、経過観察がすすめられます。

●近視性牽引性黄斑症

強度近視により眼球の壁が引き伸ばされた状態で黄斑の網膜にすきまができたりはがれたりして、視力が低下します(黄斑分離や黄斑剥離)。進行して中心窩に孔(あな)があいて、網膜剥離(もうまくはくり)が悪化することもあります。

●視神経症

眼球の伸展や眼圧の変化などで視神経やその神経線維が障害され、視野障害の原因となります。

●緑内障

もっとも注意が必要なのは緑内障です。強度近視の人は発症率が3倍以上高いというデータがあります。早期は自覚症状が乏しく、視野がほとんど欠けた末期に見つかることも多いので、社会生活への影響が強く出ます。早期発見できれば眼圧を下げる点眼薬で進行を緩やかにすることもできるので、症状がなくても年1回は眼科で定期検査を受けることをおすすめします。

あなたは、強度近視、病的近視という言葉を知っていますか?

ー8D 以上の強度近視の方は、定期的に専門の眼科で網膜や眼底の検査を

合併症として比較的多いのは、近視性牽引黄斑症、視神経障害、黄斑部出血の三つです。いずれも失明にいたる危険があります。

近視は、近視の原因である生活習慣を改善せずほうっておくと、軽度近視から中度近視へと悪化するだけです。メガネやコンタクトでは、近視の根本的な原因の解消にはなりません。あらためて近視が様々な病気を引き起こす危険性を認識し、できるだけはやく生活習慣を改めるなど対策を講じることが重要です。
まずは自分の近視度数を確認し、マイナス 8D 以上の強度近視の方は、病的近視の所見がないか、定期的に専門の眼科で網膜や眼底の検査を受けることが失明リスクの回避に非常に重要です。

失明や視力障害にいたる可能性のある強度近視・病的近視とは
参考文献:オンラインジャーナルのIOVS(Investigative Ophthalmology and Visual Science)に2020年4月発表された論文「近視の合併症:レビューとメタ分析」より。IOVSは視覚系の理解と予防に関する研究を世界的に進めることを目的とする国際組織「ARVO」の機関誌です。

近視になってもメガネやコンタクトにすれば済むと軽く考えがちですが、2020年4月にオンラインジャーナル「IOVS」に発表された数値を見ると大間違いなことがわかります。強度近視になると、近視のない人に比べて、失明のリスクのある網膜剥離は12.6倍、白内障は4.5倍の発症率です。軽度近視でも、軽視できません。近視のない人に比べて、網膜剥離は3.1倍、白内障は1.5倍の発症率。近視の度が進む前にケアを始めましょう。

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