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子どもの視力回復

知っていますか? 子どもの近見視力不良を?

遠くは見えても、近くの教科書が見えない子どもたちがいる!

近見視力検査

学校の成績が良くないのは「近見視力不良」かも!

黒板は見えるけれど、教科書やノートの文字は見えづらい。そんな症状を表す子どもたちの「近見視力不良(きんけんしりょくふりょう)」という言葉を知っていますか? 学校で行われる視力検査では発見されることがないため、気づかないうちに学習や運動の能力をうまく発揮できなくなっていることもあるといいます。

近見視力不良が怖いのは、子ども、本人も気づかないこと。

実は、視力には、遠くを見る視力「遠見視力(えんけんしりょく)」と、近くを見る視力「近見視力(きんけんしりょく)」があり、私たちは「遠見視力」と「近見視力」の両方を使って日常生活を送っているのです。学校では、黒板の文字が見える「遠見視力」と、教科書やノートの文字が見える「近見視力」との両方が必要です。しかし、現在、小、中、高校で年に1度実施しているのは「黒板を支障なく見ることができるか」を調べる「遠見視力」の検査です。 ノートや教科書など近くを見るときに必要な「近見視力」は、ランドルト環(「C」のマークの視力の判定に用いる視標)を5メートル先から見て測定する遠見視力検査では、その不良は発見できません。遠くが見えるなら近くは見える、と思うのは間違いです。

老眼のように、以前「見えた」という大人なら、視力の低下が自覚できます。しかし、子どもは成長につれてしだいに見えるようになるので、近見視力不良になった子どもは、「見えた」という経験を持っていません。「近くがぼんやり」としか見えなくても、それが「異常」だと思わず、普通のこととして受け入れ、自分から「近くが見えにくい」とは訴えません。本人は気づいていないからです。

体の不調や学習意欲、能率の低下などさまざまな影響が

目の調節機能イラスト

なぜ、「近見視力」の不良が問題になるのでしょうか?

単純に、教科書やノートの文字は見えづらい、だけではないからです。

一般的に、私たちの目は、遠くを見るときより、近くを見るときのほうが目は緊張します。それは目の構造に深く関係があります。「ものを見る時の距離」と「目にかかる負担」は大きく関係し合っているのです。人間の目はよくカメラにたとえられますが、レンズにあたる水晶体の厚みを調節して、ものを認識しています。水晶体のまわりを囲む「毛様体」という筋肉が、伸びたり(緊張)縮んだり(弛緩)することで、水晶体の厚みを変え、ピントを調節しているのです。つまり、私たちの目は近くを見るとき、毛様体筋は緊張し続け、目にかかる負担は大きいです。近見視力不良の子どもは、近くがはっきり見えている視力に問題のない子どもに比べ、近くを見るときに「さらに緊張」を必要とするのです。

それだけに、近見視力不良の子どもは、近業時の眼精疲労がより大きくなります。近業が主となる学習時には眼精疲労が起きやすく、目の疲れに加えて、肩がこる、首が痛い、背中が痛い、頭痛がするなどにより集中力がなくなり、根気も続かなくなります。

また、飛んでくるボールも見えにくいので、受けたり、打ったり、蹴ったりすることも上手にできません。近見視力不良の子どものなかには、視力に問題があるのに、「学習能力がない」「運動能力がない」、あるいは「努力が足りない」と思われている子どもがいるのです。

子どもたちの「近見視力不良」のサインを気づいてあげよう

近見視力不良に気づかないでいると、学習能力や運動能力に問題が起こる、ばかりではありません。

近見視力に不良をきたす原因として、一般的に指摘されるものは3つです。 1つは先天的な「強度の遠視」。2つ目は、「目の調節疲労」です。長時間にわたり、携帯ゲーム機など近くのものを見続けていると、目の水晶体を支える毛様体筋の緊張が続き、疲れとなって視力の調節機能が衰え、調節疲労になる可能性も否定できないといいます。 そして3つ目は「心因性の一時的」なもの。

これらのなかでも遠視系が原因の場合、視神経の発達が完了するまで(個人差はありますが6歳ごろ終わる)に対処しないと、弱視になることもあります。弱視とは、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても視力がでない目のことをいいます。 裸眼視力が0.1以下でも、眼鏡やコンタクトレンズで矯正して1.0以上の最大矯正視力がでれば「弱視」ではありません。 つまり、近見視力不良は早期発見が大切なのです。

学校で近見視力検査が行われていない以上、親や学校の先生など周囲の大人が子どもの近見視力不良を発見してあげることが必要です。

近見視力不良の子どもたちに特徴的なことや苦手なことには、以下のようなものがあります。

  1. 読んだり書いたりするとき、本やノートに目を近づける。
  2. 集中して「本を読む」「文字を書く」などの作業ができない。
  3. まばたきや目をこすったり、目を細めることがよくある。
  4. 形を写すのが苦手。
  5. 文字が正しく書けない。例えば、「生」という字の上に突き抜けなければならない棒が上に出ない。

子どもの行動を観察して、これらの項目に思い当たることがあれば、近見視力不良を疑い、一度、安心のために眼科医を訪れて見るのがよいでしょう。

約8%の子どもたちが、近業時の学習困難が予想される近見視力不良!?

知っていますか近見視力不良を

近くが見えているかの視力検査「近見視力検査」を独自に行っている幼稚園もある。

近見視力の検査方法は簡単です。学校で行われている「遠見視力検査」は5メートル先にあるランドルト環の切れ目が判別できるかどうかの検査をして、現時点で、視力がどのレベルかを判断します。「近見視力検査」も同様に、ランドルト環の切れ目を判別できるかどうかを検査するのですが、5メートルではなく30センチの距離から検査します。そのため視力表のランドルト環の大きさは、遠見視力検査で使うときの50分の3に縮小した大きさの検査表を使います。

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※家庭でも「近見視力検査」ができるように、ランドルト環の検査表を作りPDFデータをダウンロードできるようにと考えたのですが、実際にプリントアウトするとランドルト環が小さすぎて切れ目が分からなくなり、使い物になりません。プリンターで印字するのは無理のようです。家庭で行う場合は、印刷された「近見視力検査」に使用する近距離単独視標を購入して利用する以外にはなさそうです。または、お子さまが近見視力不良の疑いがある場合は、眼科医を訪れて見るのがよいでしょう。

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実際、近見視力不良の子どもたちはどれくらいいるのでしょうか。

2004年12月に、大阪府内のA小学校で、子どもの遠見・近見視力検査と生活状況調査を実施しています。その近見視力検査結果を見ると、近見視力は受検者917人(全児童980人) 中、両眼とも「1.0以上」 は670人 (73.1%)、1眼でも 「1.0未満」 は247人 (26.9%) でした。このうち、両眼とも 「1.0未満」 は89人 (9.7%) でした。教科書の文字を判読するのに支障がある近見視力 「0.7未満」 では、1眼でも「0.7未満」は73人 (8.0%)、両眼とも「0.7未満」は16人(1.7%) でした。この結果、自覚の有無にかかわらず約8%の子どもは視覚情報入手上の困難、とくに近業時の困難が予想されたのです。

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