知ってましたか? 斜視は大人になってからも起こる!
「斜視」は、ものを見るときに、片方の目はそのものに対して正面を向いているのに、もう片方の目が別の方向を向いていて、左右の目の視線がそろっていない状態をいいます。多くの場合、子どもに起こりますが、病気や目のケガなどが原因となって、大人になってから起こることもあるのです。片方の目の視線のズレに気づいたり、両目でものを見ると二重に見えるなどの症状があるときは、まずは眼科を受診しましょう。
子どもの斜視は、早期発見、そして治療が大切!
ものを見るときは、左右それぞれの目で見た視覚情報が脳でひとつに統合されることで、立体感や遠近感を捉えることができます。この働きを「両眼視機能(りょうがんしきのう」といいます。両眼視機能がきちんと働くためには、左右の目の視線にズレがないことや、左右の目の視力に極端な差がないことが必要です。
子どもに斜視がある場合、片方の目の視線がズレていることで、ものが二重に見えてしまう「複視(ふくし)」になると、脳では斜視でないほうの目で見た視覚情報だけを認識するようになる、ことが起こります。その結果、斜視のあるほうの目の視力発達が妨げられたり、両眼視機能の発達が妨げられたりします。それだけに、子どもの場合、できるだけ斜視を早期に発見し、適切な治療を始めることが大切なのです。
斜視の症状として視線のずれのほか、頭位異常(頭をかしげている、顔を曲げている、顎を上げている等)や片目つぶりが目立つことがあります。気になる症状があれば、早めに眼科を受診することが大切です。
両眼視機能は生後2ヵ月頃から急速に発達して5歳頃までに完成する脳の機能です。さまざまな立体映像を快適に見るためには立体視が必要ですが、小児にとって両眼視機能は、眼と手の協応や運動能力の発達、読み書きの習得にも影響を及ぼすといわれてます。
※両眼視機能……立体感や奥行き感など、3Dを感じ取る能力のこと。両目の視力や眼位が正常でないと両眼視機能は不完全になる。
※複視……ものが2つにだぶって見える症状。
斜視には、いろいろなタイプがある。
眼位ずれの方向によって内斜視、外斜視、上下斜視などに分けられますが、水平と上下などが合併することもあります。
- 内斜視……
右目か左目どちらかの視線が内側に向かっている状態です。両目が外に動くことができない場合には、両目が内側に寄り、顔をどちらかに回して片方の目で見ています。乳幼児に起こる「調節性内斜視」や「乳児(または先天)内斜視」のほか、強度近視などでも起こるとされています。
※調節性内斜視……これは、調節(ピントを合わせること)をするときに過剰な眼球の内よせが起こり「より目」の状態になることです。遠視が原因になっていることがはとんどです。初期は間欠斜視(ときどき、またはある条件下で斜視になる)、交代斜視(斜視眼が左右どちらか一方と決まっていない)ですが、放置しておくと、恒常斜視、片眼斜視になり、斜視が弱視になることがあります。1歳以後、普通2、3歳で発症します。 - 外斜視……
右目か左目どちらかの視線が外側に向かっている状態です。いつも外斜視になっていれば恒常性外斜視、外斜視が出現する時と出現しない時があれば間欠性外斜視です。
※間欠性外斜視とは、外斜視の時と正常な時の2つの状態をあわせもっている外斜視です。外斜視は遠くを見るときにおきると見かけ上問題となり、近くをみるときにおきると読書がしづらくなります。また疲れている時や起床直後、明るい戸外でもおこりやすいのが特徴です。 - 上下斜視……
上下斜視とは、右眼か左眼どちらかの視線が上下にずれた状態です。回旋斜視(外方・内方まわしずれ)や水平斜視(内・外斜視)に合併することが多く、眼球を動かす筋肉や脳の神経、眼球の周りの骨の異常、視力の異常、両眼視機能の異常でおこります。上下斜視によって、小児では両眼視機能の発達が阻害されたり、頭位異常(頭を傾ける)を起こしたりします。学童期~成人になると、複視が主な症状となります。
斜視の主な症状…ものが二重に見えたり、肩こり、頭痛が起こることも!
- ものが二重に見え
両方の目で見たときに、ものが二重に見えます。 - ものを見るときに首を傾けるなどの癖が出る
自分の左右の目の視線を調節して、ものが二重に見えるのを避けようとすることがあります。そのために、首を傾けたり、顔の向きを変えたり、アゴを上下に動かしたりするなど、ものを見るときに癖が出ることがあります。 - 立体感や遠近感を把握しにくい
ものの立体感遠近感を把握しにくくなります。 - 視力が低下する
斜視のある側の目の視力が低下します。 - 眼精疲労、肩こり、頭痛が起きる
ものを見ようとするときに左右の目の視線を調節しようとすることで、強い眼精疲労を起こし、それに伴って肩こりや頭痛などが起こることがあります。
斜視の原因……大人の斜視は、加齢、糖尿病、強度近視で起こることも!
■子どもの斜視の主な原因
《遠視》遠視が原因で起こる調節性内斜視は、1歳6カ月~3歳ごろまでに発症することが多いとされています。
《目の筋肉異常》上下斜視の原因で最も多い先天性上斜視麻痺(まひ)は、目を動かす筋肉のひとつである上斜筋の異常によって起こるとされています。
《原因不明》乳児(または先天)内斜視は、原因がわかっていません。
■大人の斜視の主な原因
《加齢》加齢による目を動かす筋力の低下などが、斜視の原因になることがあります。
《子どもの時に治療した斜視の再発》子どものときに治療した斜視が、再発することがあります。また、子どものときには斜視に気づかなかったり、あまり目立たなことで治療しなかった場合、大人になってから斜視が目立つようになることがあります。
《脳の病気や糖尿病、高血圧》脳腫瘍や脳梗塞などの脳の病気、糖尿病や高血圧などの生活習慣が原因となって、目の神経などが障害され、斜視が起こることがあります。
《目のケガ》目を強くぶっつけて目の神経などが障害され、斜視が起こることがあります。
《強度近視》近視の程度が強い場合、近視にともなう目を動かす筋肉の異常によって、内斜視が起こることがあります。
また、最近ではスマートフォンの過度な使用によって内斜視が起こることがあるとされています。
斜視の程度や種類などによって違う治療法。
斜視の治療法の代表的なものには、以下のものがあります。
■治療用のメガネやコンタクトレンズ
乳幼児に多い調節性内斜視の症状の改善などを目的に、治療用のメガネやコンタクトレンズを使用して、見え方を矯正することがあります。
■視能訓練
子どもの場合、両目で見る能力を養うために、視能訓練が行われることがあります。
■プリズムメガネ(プリズムレンズ)
軽度の斜視の場合、日常生活の見え方を補う目的で、度付きのプリズムメガネを使用します。プリズムメガネは、目に入ってくる光を屈折させることで、視線のズレを補正するメガネです。
■ボツリヌス療法
目を動かす筋肉にボツリヌス毒素を注射することで筋肉の緊張を緩和し、斜視の症状を抑えます。脳の病気などが原因となって起こる斜視で、手術が難しい場合などに検討されることがあります。
■手術
目を動かす筋肉を弱めたり、強めたり、移動させたりして、目の位置を改善する手術が行われます。とくに子どもの斜視では、斜視の種類や症状の程度によっては、できるだけ早い時期に手術が必要な場合があります。
斜視の手術例
成人の場合、局所麻酔で日帰り手術ができます。 乳幼児や学童期以下の場合は、全身麻酔で手術をおこないます。目を動かす筋肉(外眼筋)の付いている位置を手術でずらすことで、眼の位置を改善するのです。
例えば、目が外に向いている場合は「外直筋を後ろにずらす」、または「内直筋を前にずらす」ことで、斜視を改善できます。後ろにずらす場合には「筋肉のついている部分を一度切り離して眼球の後ろの方に縫いつけ」します。前にずらす場合は「前の方に縫いつけ直して余分なところを切除」します。