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熱中症の予防方法と応急処置法

熱中症は、正しい知識を身につければ予防できる。

熱中症の予防方法と応急処置法

熱中症がおきるメカニズムは?

熱中症とは

熱中症とは、高温環境によって人体に発生するさまざまな障害の総称です。以前よく使われていた「熱射病」は、熱中症に含まれる症状のひとつ。熱中症はそれほど暑くない時期にも発症することがあります。熱中症はなぜ起きるのでしょうか?

人間は内臓や筋肉の活動によって体内で熱が発生しますが、皮膚から空気中へ熱を逃がしたり、汗を蒸発させたりして同程度の熱を体外に放出しています。こうして熱の収支のバランスをとることで、体温は常に37℃前後に保たれています。

ところが気温が高くなってくると、皮膚と周囲の空気との温度差が小さくなり、熱が放出されにくくなるのです。気温が体温より高くなれば、逆に皮膚を通して熱が体内に入ってきます。また、湿度が高くなると、熱を逃がそうと大量に汗をかいても、汗が皮膚の表面で蒸発しにくくなるため、体温は下がりにくなります。そうなるともはや熱収支のバランスはくずれ、体内に熱がたまるいっぽうに。さらに、激しい運動によって筋肉がさかんに熱を発生するようなことがあれば、その傾向は加速します。

ちなみに、湿度が80~90%くらいあるときは、26~28℃程度の気温であっても、熱中症は起こりやすくなるといわれています。
体温が上昇し、大量の汗により体内の水分や塩分が失われると、脳や内臓、筋肉で障害が起きはじめます。具体的には、めまいや失神、頭痛、吐き気、筋肉のけいれんなどが起き、重症になると意識障害がおきます。これが熱中症の発症メカニズムです。

熱中症予防では、体を暑さにならすことが大切。

熱中症予防に日傘

気温が高くなくても湿度が高いなどの条件がそろえば、熱中症はいつでも起こりうるのです。それでもやはり気温が高くなる7~8月に発症する人が多い。なかでも、7月中ごろ(暑くなりはじめ)と8月中ごろ(盛夏)の二つの時期に発症のピークがあります。7月に発症のピークがあらわれるのは、体が暑さになれていない状態で、梅雨が明け、急に暑くなることが原因です。

「暑さになれる」とは、気温に応じてすばやく汗をかくなど、暑さに対する体温調節反応が早くなるということ。一般的にそのような状態になるまで3~4日はかかるのです。

夏休みに入り、部活動の練習を行う場合などは、急に激しい運動を行わず、最初の2~4日間は暑さになれるための軽めの運動にとどめること。暑さになれるためには、毎日少しずつでも汗をかくことが有効です。朝夕の過ごしやすい時間帯にでもエアコンの効いた室内から出て、汗をかくことがおすすめです。

日差しがあたらない屋内にいれば、熱中症にならないのでは、と思っていませんか? ところが、近年、屋内で熱中症にかかる人は増加しています。これは室内でも蒸し暑くて風通しが悪いと高温・多湿になり、熱中症が起こりやすい環境になるからです。室温が30℃、湿度が60~70%をこえると、室内における熱中症のリスクは高まります。一般住宅では、直射日光の差し込むリビング、蒸し暑いバスルームやキッチン、狭いトイレなどが発生しやすい場所といえます。

熱中症になるとどんな症状があらわれる?

熱中症のは、その症状から熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病に分けることができます。

また、重症度によって、I度、 II度、III度に分類されます。熱失神と熱けいれんはI度で、水分補給や日陰で休むなどの応急処置で対応できる軽度に分類されます。熱疲労は II度の中等症で病院へ搬送して点滴などを受ける必要があります。熱射病はもっとも重症であるIII度で、ただちに病院に搬送し、治療を行う必要があります。

分類I度=熱失神・熱けいれん

  • 熱失神
    高温・多湿の場所で長時間にわたって活動すると、大量に汗をかいて脱水症状を起こしたり、体温を下げるために体の表面部分の毛細血管が拡張し、血液が体表に集中。これにより、一時的に脳への血流が減少し、めまいや立ちくらみ、頭痛、吐き気などがおこる。
  • 熱けいれん
    炎天下で運動したときや、高温・多湿の室内などで大量に汗をかいたとき、体内の水分とナトリウムが失われる。このとき、水分だけを補給すると、血液中のナトリウム濃度が低下して筋肉の収縮を誘発し、手足のけいれんや筋肉痛、筋肉の硬直などがおこる。

分類II度=熱疲労

  • 熱疲労
    大量に汗をかいたときに、水分やナトリウムを補給しないでいると脱水症状が起こり、体液が不足して全身の血液量が減少。これにより食欲減退や全身の倦怠感、吐き気やおう吐などがおきる。適切な処置が遅れると、より重い熱射病に移行しやすい危険な状態。

分類III度=熱射病

  • 熱射病
    高温・多湿の環境て脱水症状がおこり、これが進行すると脳の温度が上昇し、脳がつかさどる体温の調節機能に異常をきたす。汗が止まり、体温は急激に40℃をこえ、皮膚は赤く乾燥。吐き気や頭痛、全身のひきつけのほか、重篤(じゅうとく)になると昏睡などの意識障害がおこる。

年代別の発症と注意ポイントは?

乳幼児の水遊び

乳幼児は体温の調節機能が未発達のため、熱中症への警戒を怠らないように。

  • 乳幼児
    自分の意思で自由に移動したり水分をとったりできない乳幼児は、高温になった室内や車内などでの事故の犠牲(ぎせい)になることが多い。乳幼児は、大人よりも体の新陳代謝が活発で、平常時の体温が高めです。1日のうちで体温の変動が起こりやすく、体温がすぐ上がります。いっぽうで、汗をかくことによる体温の調節機能が未発達です。このため、一度体温が上がると平熱に戻りにくく、体に熱をためてしまい、熱中症になりやすいといえます。それだけに、保護者は熱中症への警戒を怠らないようにしましょう。
  • 中高生
    中高生はスポーツ活動が原因であることが多い。練習中にはしっかりと水分と塩分をとり、決して無理な運動をしないことが肝心です。
  • 中年層
    中年層では、建設現場や工場内での仕事中に発症するなどの労働災害が多いのが特徴です。運動不足の状態で、週末にゴルフなどを行うときにも注意が必要です。二日酔い、睡眠不足などにならないよう体調管理に努めることも大切です。
  • 高齢者
    高齢者は、日常生活で発症する例が多くみられます。高齢者は、汗をかきはじめるのが遅かったり、のどのかわきを感じにくかったりするため、熱中症にかかりやすい。体温調節機能のおとろえを自覚し、意識的に水分補給を心がけたほうがよい。高齢者の部屋には温度計と湿度計を置き、本人も家族も気温と湿度を把握できるようにしましょう。室温は28℃、湿度は60%以下が目安です。エアコンを嫌う人も多いようですが、室温28℃を目安に冷房をかけるようにしましょう。

熱中症は、死亡することもあるので絶対に甘くみてはいけないが、正しい知識を身につければ予防ができます。体調管理に十分気をつけながら、健康的に夏を過ごそう。

熱中症予防のために

熱中症、体を冷やすときのポイント

熱中症の応急処置

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