乳幼児期は、照明に細心の注意を!
将来、近視にさせないための赤ちゃんと照明の関係

「夜、明かりをつけた部屋で寝かせている赤ちゃんは、成長してから近視になりやすい」というデータがあるのをご存じでしょうか。
これは、アメリカ・ペンシルベニア大学の研究チームが1999年5月13日発行のイギリス科学誌『Nature(ネイチャー)』に発表した研究結果です。
対象は2歳から16歳までの479人で、生まれてから2歳になるまでどのような明るさの部屋で寝ていたかを追跡調査しました。
その結果、将来的に近視になった割合は次のとおりでした。
・真っ暗な部屋で寝ていた子ども:10%
・夜間用の薄暗い照明で寝ていた子ども:34%
・明かりをつけたまま寝ていた子ども:55%
明るい部屋で寝ていた子どもほど、近視になる割合が高いという衝撃的な結果でした。
一方で、2歳を過ぎると寝室の明るさと近視の発症率に関連は見られませんでした。
人の目は2歳頃までに急速に発達します。研究チームは、この期間に暗闇で過ごす時間が十分でないと近視になりやすいと指摘しています。
近視の原因としてはこれまで、遺伝やテレビの見過ぎなどが考えられてきましたが、リチャード・ストーン教授は「赤ちゃんは明かりを消した部屋で寝かせることを勧めたい」とコメントしています。
この研究には一部反論もあります(2000年3月9日『ネイチャー』掲載)。
日本でも北海道白石区の小学生493名(男子263名・女子230名)を対象に、睡眠時の照明が視力低下に影響するかどうかを検証するアンケート調査が行われました。
調査では、生後2歳前後の睡眠時照明について
①電気を消していた(暗い)
②豆電球をつけていた(豆電球)
③明るくしていた(明るい)
の3パターンに分けて記録し、現在の視力との関連を分析しました。
結果、全体のうち11名(約2%)が「明るい部屋」で寝ており、とくに高学年で近視の進んだ児童ほど「明るい部屋」で寝ている傾向がありました。
また、“暗い”“豆電球”“明るい”の比較では、照明が明るいほど視力良好な子どもが少ない傾向が見られました。
これは、ペンシルベニア大学の報告と同様に、睡眠時の照明が視力低下を引き起こす可能性を示唆する結果です。
一方で、“暗い”と“豆電球”の差は明確ではなかったとされています。
なぜ照明が視力低下を招くのかは明らかになっていませんが、研究では「まぶたを通してわずかに入る光が網膜の暗順応に影響を与え、眼軸が伸びて近視化を促す可能性がある」と結論づけています。
家庭でできる照明の工夫

睡眠中はできるだけ電気を消して寝ることが、近視を助長するリスクを減らす一つの方法といえます。
とはいえ、生後まもない赤ちゃんがいる家庭では、夜間の授乳や様子確認のために照明をつけたままにしている場合も多いでしょう。
そこで、家庭でできる照明の工夫を3つ紹介します。
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赤ちゃんの目に光が直接入らない位置に照明を置く。
天井の常夜灯など目線の先にある照明は、常に上を向いている赤ちゃんの目に刺激を与えます。真っ暗が理想ですが、不安な場合は、光が直接目に入らない位置に照明を設置しましょう。
足元側など、赤ちゃんの顔から最も遠い位置にスタンド照明を置き、壁や床に光を向けるのがおすすめです。このとき、赤ちゃんの顔に光が当たっていないか確認してください。 -
青白い光ではなく、電球色の温かみのある光を使う。
ブルーライトは睡眠や体内リズムを乱す要因になります。白熱電球の光が理想的ですが、現在は省エネの観点から品薄なため、ブルーライトの少ない「電球色(オレンジ色の温かい光)」を選びましょう。
指向性の強いLEDは避け、電球色の蛍光灯を使うのが安心です。 -
タイマー機能を活用して自動消灯する。
電球色の照明を使用する場合でも、つけっぱなしは避けたいものです。タイマー付きのコンセントを使えば、設定した時間に自動で消灯でき、寝かしつけ後の安心感にもつながります。

赤ちゃんの視線の先に照明がある環境は、視力にも睡眠にも好ましくありません。


