疲れ目の原因は、毛様体筋にあった。
人間の目は、遠くを見るときに疲れないようにできている。
なぜ、目は疲れるのでしょうか?
そのためには「人間はどのようにしてモノが見えるのか」を知らなければなりません。
近視も乱視などもない、正常な状態の目をあなたがもっているとします。
このような目は、遠方からきた平行光線を角膜や水晶体の凸レンズで曲げて、調節しなくても網膜上に集めることができます。曲げられた光が一点に集まる場所を「焦点」といいます。カメラのフィルムに相当する「網膜」に焦点が合えば、映像を結ぶようにできているのです。
このような目で、例えば、パソコンの文字を読むとします。画面の文字から目との距離は約35センチとします。
網膜上に光の焦点をもってくるには、緊張していない状態での水晶体凸レンズの屈折力では足りません。光をより内側に曲げる必要があります。水晶体の凸レンズカーブを強くしなければなりません。
水晶体のカーブを強くするには、毛様体筋を収縮させることが必要です。
近くを見ようとすると、毛様体筋が収縮して、毛様体の突起が前方に突き出ます。毛様体の突起と水晶体は「チン小帯」という細い紐のような繊維でつながっています。毛様体の突起が前方に突き出ると、「チン小帯」の緊張がゆるみ、「チン小帯」によって水平に引かれていた水晶体が引っ張られなくなるので、「水晶体がもともともっていた弾性力」により、自らがふくらもうとします。ふくらむことで水晶体のカーブが強くなるのです。
凸レンズのカーブが強くなると、光はより内側に曲がり、網膜上に光の焦点が結ばれます。
これが近くのものを見るときの一連の動きであり、目の「調節力」なのです。
「調節」は水晶体の弾性力により起きるものです。
パソコンやスマホなどを長く見続ける行為を続けると、毛様体筋を使い続けることになり、毛様体筋の緊張を長く強いることになります。これが、目の疲れの一因なのです。
毛様体筋は、遠くを見るとき緊張がとけ、目に負担がかかりません。逆に、近くを見ることは毛様体筋を緊張させ、負担が大きくなり目が疲れるのです。そういうふうに目はつくられているのです。
「老眼」で近くが見えないことと、目の疲れによる見えにくさは、別物!
「スマホ老眼」という言葉があります。
スマホ老眼とは、スマホ画面などを長時間見続けることで毛様体筋が疲労し調整機能が低下、手元や遠くにピントが合いづらくなる症状を指します。ところが老眼とは、老化現象などが原因で水晶体が弾力を失い、水晶体の厚みを変える力が衰えているために、光の曲がりが不十分で近くの文字が見えにくくなるのです。
テレビCMなどでは「老眼」と「眼精疲労」を混同して放送し、誤解を招く結果となっています。老眼の原因は加齢による水晶体の硬化であり、近くを見すぎて毛様体筋が疲労する目の調節疲れとは別物なのです。
本当の「老眼」である水晶体が固くなって弾力性を失うことは、毛様体筋の緊張を解消しても治りません。
目の緊張をとる方法。
「老眼」に対する治療方法は今のところ手術以外にありませんが、いっぽうの毛様体筋の緊張状態が続くことによる見えにくさは、効果的な治療方法があります。疲労した毛様体筋は、手足の筋肉同様、毛様体筋の血流を増やし、たまった疲労代謝物質の乳酸を排除するればよいのです。
①目を温める
「目を温める」ことは、局所の血管拡張、血液やリンパ液の循環促進、細胞の新陳代謝などに作用します。酸素が補給され、緊張していた筋肉は徐々に弛緩していき、乳酸の量も減ります。
手軽な方法として、入浴時、タオルを湯に浸して絞り、天井に向けた目に載せて、閉じたまぶたの上から5分ほど、温めるとよいでしょう。入浴時以外では、ホットタオルがオススメ。目の上にのせるだけで、簡単にケアができます。
………ホットタオルの作り方………
疲れ目を解消するホットタオルの作り方。
(1)タオルを水で濡らして軽くしぼり、ラップで包みます。
(2)500~600Wの電子レンジで1分~2分程度温めます。
(3)温めたタオルを、ラップをつけたまま、乾いた布で巻いてできあがり。
疲れ目軽減で目を温める場合は、約5〜10分温めることで、目の見え方を調整する毛様体筋のこりがほぐれ、目のピント調節力が改善され、疲れ目も緩和されます。
②遠くを見る
近くのものを見続けていると毛様体筋は緊張するわけですから、遠くをぼんやり見ると逆に毛様体筋の緊張がほぐれます。じっと休んでいると緊張した毛様体がゆるむのには15~20分を要しますが、遠くを見ることで弛緩時間を早められます。ベランダや窓際から遠くのビルや山など1キロ以上の遠方を5分以上、ぼんやり見ましょう。
機器を使って、長時間の緊張で固まった毛様体筋のコリをとる。
仮性近視や近業作業による疲れ目には散瞳剤(さんどうざい)のような毛様体筋を麻痺させる点眼剤で毛様体筋の緊張を解く方法もあります。しかし、毛様体筋の緊張が非常に強くて、この緊張が簡単には取れない場合もあります。
これは毛様体筋の長時間緊張により、緊張した筋肉が固まってしまったような状態です。
そこで注目したいのが、毛様体筋の緊張緩和に役立つ機器、超音波治療器です。
超音波治療器の注目すべきはたらきのひとつに「血行の改善」があります。つまり、目の血流がよくなるということです。細胞のはたらき(新陳代謝)をよくするためには、きれいな血液と順調な血流が必要です。つまり、血液の状態・流れをよくすることが、目の健康にはとても重要なのです。