調査の背景と概要
本記事は、文部科学省が毎年実施している「学校保健統計調査(令和6年度)」の確定結果に基づき、児童・生徒の裸眼視力に関する最新の実態を紹介するものです。
この調査は、全国の国立・公立・私立の幼稚園から高校までの5歳から17歳までの児童・生徒を対象に行われ、**健康診断の結果(視力、身長・体重、疾病の有無など)**を集計したものです。
- 調査期間:令和6年4月1日~6月30日
- 対象人数:約319万人(抽出率25.4%)
- 調査方法:学校保健安全法に基づく健康診断結果をもとに集計
- 調査目的:子どもの発育状態および健康状況の実態を明らかにし、今後の教育・保健政策に役立てること
本コラムでは特に、裸眼視力1.0未満の児童・生徒の割合の増加という懸念すべき結果に注目し、背景や対策について詳しく解説します。
スマホ・ゲーム・タブレット…便利なデジタル社会の裏で、子どもたちの“視力危機”が進行中です。
文部科学省が2024年に実施した「学校保健統計調査」によると、裸眼視力が1.0未満の子どもの割合は以下のような結果となりました:
- 小学生:36.84%
- 中学生:60.61%
- 高校生:71.06%
この数字は、視力低下が学年の進行とともに進み、特に高校生では10人に7人が視力1.0未満であることを示しています。
令和6年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)より
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なぜ、これほどまでに視力が落ちているのか?
- スクリーンタイムの増加
スマートフォンやタブレットの普及により、長時間にわたる近距離での画面注視が習慣化。これが目の筋肉を酷使し、ピント調整力の低下を招いています。 - 屋外活動の減少
太陽光を浴びることが目の健康維持に良いとされており、特にドーパミン分泌が近視の進行を抑制する効果があるといわれています。しかし、外遊びの時間は年々減少傾向に。 - オンライン学習の常態化
コロナ禍以降、オンライン授業やタブレット教材の利用が日常化し、紙の教材に比べて目にかかる負担が増しています。
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文部科学省の対応とこれからの課題
文科省では以下のような対策に乗り出しています:
- 目の健康を守る啓発資料の配布
- 保健教育モデル授業の動画制作
- 屋外活動の推進 など
しかし、これだけで急増する視力低下を食い止めるには不十分との声もあります。家庭での視力チェック習慣の導入や、**「1日2時間以上は屋外で過ごす」**といった新しい生活指導の普及が求められています。
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保護者ができる「3つの視力ケア」
- 30分ごとの目の休憩
「20-20-20ルール」──20分ごとに20フィート(約6m)先を20秒間見る習慣を。 - 毎日の屋外時間を確保
外で遊ぶ時間を意識的に作る。最低でも1~2時間が理想。 - 睡眠と栄養のバランス
目の細胞の修復は睡眠中に進みます。睡眠不足は視力悪化の引き金に。
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終わりに
視力の低下は、学習や生活の質を大きく左右する重要な健康課題です。テクノロジーと共に生きるこれからの時代、「視力を守る習慣」こそ、子どもたちの未来への投資といえるでしょう。
政府統計ポータル e-Stat:学校保健統計調査(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00400002&tstat=000001011648