※グラフの解説/流行性角結膜炎は5類感染症定点把握疾患に定められていて、全国の一部の医療機関約700カ所の眼科定点から週単位(月~日)で発生状況が国に報告されています。ある週の報告総数が500人であったとすると、1医療機関あたりの平均罹患数は、「500人÷700=0.71人」となります。
このグラフは、「はやり目」流行性角結膜炎の流行状況を表すもので、日本全体の感染数は調べられていません。
「はやり目」の感染状況グラフを掲載。週単位比では去年の5倍流行。
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1. 今年は、「はやり目」流行性角結膜炎の流行に要警戒!!
2. 「はやり目」は、角膜にも炎症が起こるため視力低下の原因となることも。
3. どういう経路で感染するの?
4. 感染した時の治療法は?
5. 他の人にうつさない対策は?
今、話題になっている季節性インフルエンザ。例年、12月ごろから感染が広がる季節性インフルエンザの流行が、9月から始まっていて、東京都を含む7都県が「注意報レベル」となって異例の事態となっています。
この季節性インフルエンザだけでなく、今年2023年の年初からジワジワと感染が広がり、感染状況の週単位(9月25日〜10月1日)比では去年の5倍以上の感染率となっている病気があります。
それが、流行性角結膜炎。結膜は、白目の表面とまぶたの裏側を覆っている薄い膜で、ここに炎症を起こす疾患を「結膜炎」と総称しています。流行性角結膜炎はアデノウイルスというウイルスの感染が原因となる病気です。
感染力がきわめて強く、時に大きな流行を引き起こすことから、「はやり目」とも呼ばれているのです。主として「手」を介した接触により感染します。アデノウイルスは電車の吊り革やドアノブなどに付着しても10日以上も感染力を持つほど非常に強いウイルスなのです。
「はやり目」は、角膜にも炎症が起こるため視力低下の原因となることも。
流行性角結膜炎になり、角膜の炎症が強くなると、視力低下の原因となることもある。
小児を中心に成人も含む幅広い年齢層がかかります。 手指を介し接触感染することから、学校、職場、病院、家庭内などの人が濃密に接触する機会の多い場所で流行します。
感染すると、5日~2週間の潜伏期間の後、「さらさらした目やにが出る」、「涙が出る」、「まぶしい」、「目がゴロゴロする」などの症状が現れます。まぶたは腫れ、結膜はむくみ、充血がみられるようになります。
そして、発症1週間頃から結膜の炎症に加えて角膜(黒目の部分)に点状の濁りが現れることがあります。このように、結膜と角膜に炎症が起こるため、流行性角結膜炎といわれているのです。角膜の炎症が強くなると視力低下の原因となることもあるので、眼科を受診し適切な治療を受ける必要があります。
また、耳の前に触れると痛みを伴うグリグリとした腫れができています。これは、ウイルスと戦う免疫機能を司っているリンパ節の腫れで、ウイルス性結膜炎に特徴的な症状です。
どういう経路で感染するの?
流行性角結膜炎になった時、他の人に感染を広げないためには、手洗いや消毒の徹底が重要です。
接触感染といって、病原ウイルスによって汚染されたティッシュペーパー、タオル、洗面器などに触れることで感染します。発症は年齢に関係なく小児から老人まで幅広い年齢層で見られます。他の人に感染を広げないためには手洗いや消毒の徹底が大切です。
タオルなど、目に触れる可能性があるものはまだ感染していない家族とは別にしたり、感染した人はお風呂には最後に入るようにしたりしましょう。1カ月程度は便の中にウイルスが排泄されることがあるため、症状が落ち着いてもこまめに手を洗うことが大切です。
感染した時の治療法は?
流行性角結膜炎は、発症までの潜伏期間は7日~2週間くらいです。症状は発症後1週間程度で最も強くなり、2週間~3週間で治まります。その炎症が角膜に及ぶと、角膜に点状の濁りが生じ見えにくくなることがあります。この濁りは、数か月から1年に及ぶこともあります。
流行性角結膜炎はアデノウイルスというウイルスの感染が原因ですが、ウイルスを根本的に退治する薬はなく、体内で抗体が作られて症状が落ち着くのを待つしかありません。
その間、対症療法として「非ステロイド性抗炎症薬」や「ステロイド薬」の点眼、細菌感染の合併を防ぐための「抗菌薬」の点眼などが行われ、自然治癒を待ちます。治るまでに2~3週間かかります。
流行性角結膜炎に感染したら、仕事や学校に行くのを休むことも必要です。とくに人と会う仕事をしている場合は注意が必要です。
他の人への感染の危険があるのは、発症から2週間程度となります。学童の場合、登校やプールに入るのは、医師の許可が必要となります。とにかく、感染を広げないように注意することが大切です。
他の人にうつさない対策は?
感染しないためには、手洗いが一般的な対策です。また、外では意識して目を触らないように気をつけましょう。
それでも感染してしまった場合には、拡散させないための対策も必要です。
- 患者さんとそれ以外の人で、手や顔を拭くタオルを分ける
- 患者さんもその家族も流水でよく手を洗う
- 目を手やタオルで拭かず、ティッシュペーパーなどの使い捨てのものを使用する
- お風呂は患者さんが最後に入る
- 患者さんの衣類や枕カバー、シーツなどは、ほかの家族とは別に手洗いで洗濯し、洗濯後は日光でよく干すこと
※NHKの「新型コロナと感染症・医療情報」サイトでは、「感染症データ・情報(約20種類の感染状況がわかる)」の中に「はやり目(流行性角結膜炎)」の項目があり、全国都道府県別の感染状況や全国の感染状況推移がグラフ等で見られます。関心のある方はご覧になってください。
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