笑い」の医療効果に、あなたも驚嘆するはず!
地震、台風、様々な暴力的な事件など……つい気持ちも表情も暗くなりがち。日本で、世界で起こる悲劇的なニュースの数々を目にしない日はないといっていいほどです。心理学者によると、ネガティブで暴力的な報道は深刻で長期的な心理的影響を与えるといい、それは単に悲観的になる、あるいは非難するといった感情をもたらすだけにとどまりません。ストレスや不安、抑うつ症状を増大させ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こす要因にすらなるとしています。
こんな時こそ笑顔が欲しいもの。無理に笑うことが、ただの空元気とは限らないのです。なぜなら研究で、笑いが遺伝子レベルで健康増進に有効であることがわかったからです。リラックスするためにも、健康増進のためにも笑いを見直すことが大切です。
実証実験で、笑うと免疫力がアップすることがわかった!
笑うことには、お金もかからず副作用の心配もない、体の特効薬といえます。
医学的な研究からでも笑いには、実はさまざまな病気を改善させる働きがあることがわかってきているのです。
大阪府立病院機構「大阪国際がんセンター」(大阪市中央区)は2018年5月29日、漫才や落語による「笑い」によって、がん患者の免疫力向上のほか、緊張や疲労といった心身の状態も改善したことなどが確認されたと発表しました。
センターは吉本興業や松竹芸能、米朝事務所の協力を得て、笑いががん患者に与える影響を調べる実証研究を実施。昨年5~6月の計4回、漫才や落語を鑑賞した患者と、鑑賞しなかった患者のそれぞれ約30人の血液を採取して分析しました。
その結果、笑いの舞台を鑑賞した患者の1人は、免疫細胞の一つである「ナチュラルキラー(NK)細胞」の血中の割合が実験前の約1・3倍に増えたことなどが確認され、鑑賞した患者全体でも免疫細胞の増加傾向がみられたそうです。また、患者の気分の変化などもアンケートし、緊張や抑うつ、疲労などの6項目全てで改善がみられ、がんの痛みについても改善があったといいます。
人間の体は、毎日5,000個ものがん細胞が生まれている。
あまり知られていませんが、若くて健康な人の体にも1日3,000~5,000個ものがん細胞が発生しています。これらのがん細胞や体内に侵入するウイルスなど、体に悪影響を及ぼす物質を退治しているのが、リンパ球の一種であるNK細胞なのです。
人間の体内にはNK細胞が50億個もあり、その働きが活発だとがんや感染症にかかりにくくなるといわれています。
私たちが笑うと、免疫のコントロール機能をつかさどっている間脳に興奮が伝わり、情報伝達物質の神経ペプチドが活発に生産されます。“笑い”が発端となって作られた“善玉”の神経ペプチドは、血液やリンパ液を通じて体中に流れ出し、NK細胞の表面に付着し、NK細胞を活性化します。その結果、がん細胞やウイルスなどの病気のもとを次々と攻撃するので、免疫力が高まるというわけです。
逆に、悲しみやストレスなどマイナスの情報を受け取ると、NK細胞の働きは鈍くなり免疫力もパワーダウンしてしまいます。ただ、免疫力は強ければよいものではありません。リウマチや膠原病など自己免疫疾患と呼ばれる病気は、免疫システムが体に悪い影響のある物質だけでなく自分自身の体まで攻撃することで引き起こされます。
興味深いのは、心の底から笑わなくても「笑う」動作だけで、NK細胞の活性度が高まるという実験結果が出ている点です。これは脳内物質に働きかけて気分が良くなる効用にも当てはまります。作り笑いでも、βエンドルフィンという神経伝達物質が脳内に分泌され、気分が高揚します。落語や漫才でも効果が期待できるのです。
NK細胞活性と加齢の関係をみると、細胞数は大きくは変化しませんが、活性は15~20歳をピークに加齢とともに低下します。50歳過ぎると20歳頃の半分に低下するというデータがあります。ですから、50~60歳になったらNK細胞が元気でいられるように、健康のためにも生活の中に笑いを増やすことを心掛ける必要があるのです。
笑いは乱れた機能を正常に戻す。
笑うと免疫力が高まるだけでなく、ほかにも体にさまざまな良い効果をもたらすことがわかっています。
- 脳の働きが活性化
脳の海馬は、新しいことを学習するときに働く器官。笑うとその容量が増えて、記憶力がアップします。また、“笑い”によって脳波のなかでもアルファ波が増えて脳がリラックスするほか、意志や理性をつかさどる大脳新皮質に流れる血液量が増加するため、脳の働きが活発になります。 - 血行促進
思いきり笑ったときの呼吸は、深呼吸や腹式呼吸と同じような状態。体内に酸素がたくさん取り込まれるため、血のめぐりがよくなって新陳代謝も活発になります。 - 自律神経のバランスが整う
自律神経には、体を緊張モードにする交感神経とリラックスモードにする副交感神経があり、両者のバランスが崩れると体調不良の原因となります。通常起きている間は交感神経が優位になっていますが、笑うと副交感神経が優位になるので、交感神経とのスイッチが頻繁に切り替わることになり、自律神経のバランスが整います。 - 筋力アップ
笑っているときは心拍数や血圧が上がり、呼吸が活発となって酸素の消費量も増え、いわば“内臓の体操”の状態。静かに過ごすより笑っているほうが、カロリーの消費量が多くなります。さらに、大笑いするとお腹や頬が痛くなるように、腹筋、横隔膜、肋間筋、顔の表情筋などをよく動かすので、多少ながら筋力を鍛えることにもなります。 - 幸福感と鎮痛作用
笑うと脳内ホルモンであるエンドルフィンが分泌されます。この物質は幸福感をもたらすほか、“ランナーズハイ”の要因ともいわれ、モルヒネの数倍の鎮静作用で痛みを軽減します。
笑顔をつくるだけで、笑った時と同じ効果がある。
「笑え」と急にいわれても、そう簡単に笑えない人もいます。しかし、鏡を見て、笑顔をつくるだけでも、笑った時と同じ効果があるといいます。笑うふりをすると、人間の体は面白いもので、脳や体は笑った時と同じ反応をするのです。
今、笑いながら体操をするインド生まれの健康法「笑いヨガ」が全国に広がっています。手軽にできる健康法としてシニア世代から人気が高いのです。有酸素運動であると同時に、ストレス解消など心にも良い作用をもたらすそうです。
笑いヨガは1995年にインドの医師によって考案され、今や100カ国以上に広がっているといいます。ヨガの呼吸法を組み合わせながら、冗談やユーモアはなく、理由なく「ワーハハハっ」と笑う。特別な道具を用意する必要はないため、手軽に始められ、激しい運動をすることもない。ある講座では深呼吸で呼吸を整え、体操をスタート。「ライオン笑い」や「窓ふき」「アイロンかけ」など、動物や日常生活の動きを取り入れた体操をしながら、とにかく笑うのです。
初めは照れくさいそうですが、そのうち本当におかしくなって、腹の底から笑ってしまうのです。
笑いのことわざ
昔から「笑いと健康・幸せについて」のことわざが多数あります。幸せだから笑う、笑うから幸せになる、どちらが先か分かりませんが、笑う=幸せ=健康と同列にあると考えるのが一番でしょう。
- 笑いは百薬の長
- 笑いに勝る良薬なし
- 笑う門には福来る
- 箪笥長持ち持ってくるよりも笑顔一つの嫁が良い
- 幸福だから笑うのではないむしろ、笑うから幸福なのだと私は言いたい