スマホはそばにあるだけで注意力や認知機能を低下させる。
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1. 「スマホ依存度を調べるテスト」を使って、依存度を確認。
2. スマホ依存度を調べるテスト
3. スマホは「バッグやポケットの中にあるだけ」で集中力を低下させる。
4. ネットの使用頻度が高いほど子どもの脳の発達が遅れる。
「スマホ依存度を調べるテスト」を使って、依存度を確認。
スマホ依存の人の脳では「ギャンブル依存」の人と同様、脳の「前頭前野」の機能が弱まっていることがわかっている。それにより、行動の抑制ができずスマホをやめたいと思っても、やめられなくなっている。
スマホ依存度を調べるテスト
スマホを操作することで、すぐに調べ物ができる、スマホ決済ができる、メッセージ・通話が無料、SNSやショッピングができる、などあらゆることが可能です。それだけに、私たちはスマホを肌身離さず持ち歩いています。もはやスマホなしでは生活が成りたたない、といってもいい過ぎではないでしょう。反面、
「スマホを使っていないと不安で仕事や勉強に集中できない」
「夜遅くまでスマホを使っているので睡眠時間が減っている」
「時間を忘れて没頭してしまい、やるべきことをやらなかったりする」
「常にスマホをチェックしていないとイライラしたり、不安になったりする」
など、スマホが生活に悪影響を与えています。とくに子どもにとっては、ゲームや動画、SNSなどへの過度な依存が精神面・学習面・視力発達に与える悪影響がしばしば問題にされています。
スマホの使用で悪影響が出ているのに、自分の意思ではスマホがやめられない――これは「スマホ依存症」かもしれません。依存症とは、日々の生活や健康、大切な人間関係や仕事などに悪影響を及ぼしているにも関わらず、特定の行動をやめたくてもやめられない(コントロールできない)状態です。「スマホ依存症」は病気として認定されたものではなく、極端にスマホに依存した状態をわかりやすく表現した一般名称です。
最近の脳画像を使った研究では、スマホ依存の人の脳では「ギャンブル依存」の人と同様、脳の「前頭前野」の機能が弱まっていることがわかっています。
前頭前野は、記憶や感情の制御、行動の抑制など、さまざまな高度な精神活動を司っています。前頭前野という部位では、理性的に衝動行動を抑えるセロトニンという神経伝達物質があり、スマホ依存の人の脳ではこの働きが低下していると考えられているのです。行動の抑制ができずギャンブルやスマホをやめたいと思っても、やめられなくなっている、と考えられるのです。
「自分はスマホ依存症かも?」と思った人は、下段の「スマホ依存度を調べるテスト」を使って、依存度を確認してみましよう。「スマホ依存度を調べるテスト」は、ピッツバーグ大学の心理学者キンバリー・ヤング博士が開発した「インターネット依存症テスト(Internet Addiction Test:IAT)」を参考に、東京大学大学院情報学環橋元研究室が作成。
それぞれの設問について5段階で回答します。
「いつもある」(5点)
「よくある」(4点)
「ときどきある」(3点)
「めったにない」(2点)
「まったくない」(1点)
5つの選択肢の評点を合算して合計得点を出す。判定については博士の手法に従い、
「70 点以上(スマホ依存傾向 高い)」
「40~69 点(スマホ依存傾向 中)」
「20~39 点(スマホ依存傾向 低い)」
という3区分で依存度を確認できます。スマホ依存傾向「高い」の結果が出た人は、ネットを使い始める前に比べて、睡眠時間や家族と話をする時間が減少し、スマホのしすぎが原因で様々な生活への影響を経験していますが、必ずしも医学的な治療が必要な人であるとは限りません。もちろん、スマホの使用時間を制限するなどの対応が必要です。
※「スマホの依存度を調べるテスト」のPDFデータです。プリントアウトしてご使用できます。A4サイズで作成していますので、プリントアウトする時は、A4サイズでページの拡大縮小なしでプリントしてください。
スマホは「バッグやポケットの中にあるだけ」で集中力を低下させる。
スマホは、電源を切っていても、そばにあるだけで注意力や認知機能を低下させるということが、複数の研究で明らかになっています。
テキサス大学オースティン校のビジネススクールである「マコームズ・スクール・オブ・ビジネス」のエイドリアン・ワード教授らの研究チームは、800人のスマートフォンユーザーを対象に実験を実施。
800人の参加者に2種類の難しい精神作業を与える実験を行いました。ひとつの課題は、ランダムに並んだ文字列を暗記しながら数学の問題を解くというもの。もうひとつは、いくつかの選択肢のなかから、視覚的な図形を完成させるための画像を選ぶというものです。
そして作業に入る前に、スマホを目の前の机の上に伏せて置くか、ポケットかバッグにしまう、あるいは別の部屋に置いておくかのいずれかを行なうよう、参加者に指示しました。作業の邪魔にならないよう、スマホのアラート音やバイブレーション機能はオフにしてもらっています。
結果は、明瞭でした。成績が最もよかったのはスマホを別の部屋に置いたグループで、次がポケットにしまったグループ。スマホを机の上に置いていた人たちの成績は最低だったのです。
スマホの電源を完全に切っていた場合でも、同様の結果が得られました。スマホがそこにあるだけで、考える能力や問題解決の能力に悪影響を与えたということです。
研究チームはこの結果から、たとえ全力で取り組まなければならない課題が与えられていたとしても、スマホが近くあるほど意識がそちらに引っ張られ、脳の認知能力の一部が消費されてしまうことが明らかになったことを示しています。
ネットの使用頻度が高いほど子どもの脳の発達が遅れる。
インターネットの長時間使用は、子どもの脳の発達自体に悪影響を与える、という研究結果があります。
東北大学の川島隆太教授らのグールプは、仙台市在住の5歳~18歳の児童・生徒224名を対象に、3年間にわたって子どもの脳を調査。インターネット習慣をアンケート調査するとともに、MRI検査により脳発達にともなう大脳灰白質体積の増加を算出しています。
MRIとは、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)の略で、エックス線は使用せず、強い磁石と電磁波を使って体内の状態を断面像として描写する検査です。
その結果、インターネットを頻繁に使う子どもは、そうでない子どもに比べて、脳の多くの領域で「灰白質と白質の容積が小さい」といったことが突き止められたのです。
大脳灰白質(大脳皮質)は、知覚、随意運動、思考、推理、記憶などの機能をもち、これが増加してる=脳がより高度に成長していくことに繋がるとのことです。
インターネットの長時間使用は、成長期の脳の発達を遅らせていたのです。
グラフの右下に向けて引かれてる点線が近似直線で、インターネットの使用頻度が多い(グラフ右側)ほど、大脳灰白質の増加が減少するというのがわかります。
この結果は、インターネット習慣のため、スマホの習慣と直接関連するものではありませんが、スマホを使ってのインターネット利用率は高く、スマホ使用と関係があるといえます。スマホを使っての長時間のインターネット使用→大脳全体の発達が遅れ→学力低下などを引き起こす、と考えられるのです。
「何時間以上利用しない」など、子どもに約束させてスマホ利用を認めることが大切。
子どもの場合、保護者が「スマホ依存の怖さ」を知り、子どもへ「何時以降は利用しない」など利用してよい時間帯を制限したり、「何時間以上利用しない」など利用時間の上限を決めることが大切です。
自分の部屋や寝室ではスマホを使わない、食事中はスマホを使わない、という約束をしたりすると、スマホ依存になりにくいようです。
睡眠時間、自宅で勉強する時間、家族と顔を合わせて話をする時間が長い子どもほど依存度が低いという、調査データもあります。