スマホ育児の悪影響と対策。
スマホが子どもに及ぼす影響を理解することが基本
スマートフォンやタブレット端末を育児に利用するスマホ育児。スマホ子守、スマホ子育てと呼ばれることもあります。スマホ育児のマイナス面を捉えた言葉として、スマ放置という言葉も登場しています。スマホ育児に対しては、幼児の健全な発達や発育に悪影響を及ぼし、親子のコミュニケーションや情緒的な関係も少なくなるといった指摘が少なくありません。
それでも、子どもへの悪影響が心配だけれど、機嫌がよくなったり自由な時間ができたりするのでスマートフォンを使っている……。
とスマホを利用する母親が増えているのが現状です。
玩具メーカーのセガトイズ(東京都台東区)は、2016年10月14~16日、インターネットを通じて全国の4~8歳の第1子を持つ20~49歳の母親800人を対象に、「スマホを使用した子育て」に関して質問しています。
「子どもをスマホで遊ばせたことがある」と回答したのは63.3%。
スマホで遊ばせる理由は、
- 自分の時間を確保するため=73.3%。
- 電車やバス、自家用車での移動中=49.0%
- ごほうびとして使わせてあげたい時=23.7%
スマホで遊ばせたことがあると答えた母親のうち、「よくないことだと思う」「ややよくないことだと思う」が合わせて76.3%に上り、罪悪感を感じている母親が多いこともわかっています。
違う調査でも同様の結果が出ています。調査したのは、ヤフーなどネット関連業者でつくる「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」です。
調査は2016年10月にネットで実施。第1子に0~6歳の未就学児を持つ男女が対象で、1149人から回答を得ています。
スマホ、タブレット、パソコン、ゲーム機などの情報通信機器を子どもが利用した経験があるのは、
- 0歳が22%
- 1歳が42%
- 2歳が56%
- 3歳が60%
- 4、5歳がともに63%
- 6歳が74%
経験者の利用頻度は「毎日必ず」「ほぼ毎日」で5割を占めています。利用内容は、写真や動画の閲覧が最も多く、ほかにゲームや音楽など。
使っている理由として「機嫌が良くなる」が54%と最も多く、「手を離れる時間ができる」(40%)、「機器に触れたがる」(28%)
などとなっています。
目など健康面への影響が心配です。
「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」では、「機器利用の時間や場面について」の提案として
ベッドや布団に入る1時間前には利用を終わらせ、「夜ふかし」や「寝不足」にならないように。
3歳から6歳の子どもには、夜間に10時間の睡眠が必要といわれています。幼児期に睡眠が不足すると、子どもの心身の成長を損なうだけでなく、将来の睡眠障害や生活習慣病などのリスクを高めると指摘されています。また、情報機器のスクリーンから発している光の影響で、入眠の質の高い睡眠の妨げになる可能性が心配されています。スマートフォンなどの利用は、ベッドや布団に入る1時間前には終わらせるようにし、お子さまが夜9時までに入眠できるよう、生活習慣を見直していきましよう。
利用時間は、1日合計で1時間以内にするように気をつけて。
保護者の心配事のひとつに、視力への悪影響があります。画面が小さなスマートフォンやタブレットは、目と画面の距離が近く、集中してしまうと目の筋肉の緊張による「眼精疲労」や、目のピントを合わせるための「調節力の低下」などを招き、視力発達への悪影響につながるとされています。米国小児科学会(AAP)が行った、子どものメディア利用全般に関する提言のなかでも、情報機器の利用は、1日あたり1時間以内(2~5歳児)に限るように進言されています。
などとしています。
スマホ育児で育った子どもの将来を考えて、機器を活用しょう
幼児は、起きている間よりも寝ている間に成長ホルモンがたくさん分泌されるので、一定時間熟睡することは大人よりも重要です。また、幼児は、興味があることに全力で取り組むので、必然的に疲れるまでスマホを使い続けてしまい、急速に視力が低下することがあります。
また、物を立体的に見る、遠近感などを含めた眼の機能は、低年齢の子どもほど悪影響を受けやすく、長時間スマホやタブレットを見せ続けるのは、子どもの眼の成長にとってはよくないのです。
画面を見て手を動かすだけのスマホのゲームをやり続ければ、パッと見てパッと反応することが得意になる反面、人に話を聞いて、その言葉の意味をじっくり考えたりすることの発達が阻害される可能性があるそうです。子どもがバランスよく成長し、知能を伸ばしていくためには、身体感覚を育む運動、想像力を育て、聞く力を伸ばす絵本の読み聞かせ、空間の認識を刺激する積み木など、多彩な体験をさせることが大切です。
いま、スマホを子育てに活用するかどうか賛成派、反対派に分かれての議論は年々増えていますが、現状は、スマホが普及し、子育てに関するアプリが充実してくるなか、スマホを育児に活用する人は増えています。
それだけに、大切なのは、保護者がスマホというツールが持つメリットとデメリットを理解して、子どもへの悪影響がないよう、家庭の状況に応じてうまく活用していくことです。
スマホ依存傾向の高い子どもの方が、「夜、寝る時間が遅くなった」「勉強する時間が減った」
●警視庁の平成27年のアンケート調査の結果から
近年、スマートフォンの普及が目覚しく、警察に寄せられる少年相談にも、スマートフォン等の携帯電話の使用に絡む内容の相談が増えているそうです。そこで、警視庁では子どもの携帯電話やインターネット利用についてアンケート調査を実施。平成27年7月1日から7月20日までの期間、小中高生3,116名(有効回答率95.7パーセント)、保護者 2,108名(有効回収率72.8パーセント)を対象におこなわれました。
「子供の携帯電話やインターネット利用について」というかたちで、調査結果を発表しています。
「携帯電話が手元にないと不安になる」「食事をしながら、携帯電話をいじる」などの10項目の質問に対する答えを点数化し、「低依存群」「やや依存群」「高依存群」に分けた上で世代別の割合を算出しています。
まず、携帯電話の保有状況ですが、自分の携帯電話を持っていると回答した割合は、小学生でも6割を超えており、高校生になるとほとんどの子どもが保有しています。
次に、「携帯電話やインターネットへの依存状況」ですが、
高依存群の占める割合は、小学生では5%にも満たないですが、中学生になると一挙に2割を超え、さらに高校生では3割以上を占めています。こうした状況を踏まえ、小学生のうちに、携帯電話の使い方やインターネットの利用の仕方をしっかりと教えることが、携帯電話やインターネットへの依存や、そこから生じる様々な弊害を未然に防止するために大切であると考えられる、としています。
そして、
携帯電話、インターネット利用の依存傾向の高い子どもの方が、「夜、寝る時間が遅くなった」「勉強する時間が減った」等のマイナスの行動変化がみられる者が多くなっている、結果が出ているのです。