白内障と認知症の関係
《ページ目次》下の項目をクリックするとジャンプします。
1. 白内障発症から5年以内に手術をするほうが、認知症のリスクを減らすことになる。
2. 白内障についておさらいしよう。
3. なぜ、白内障の手術を受けると、認知症発症リスクが下がるのか?
4. 認知症は治療法がないため、発症を遅らせることが重要。
5. 白内障の自己診断テスト
白内障発症から5年以内に手術をするほうが、認知症のリスクを減らすことになる。
ワシントン大学が2021年12月6日、JAMA Intern Medicine誌電子版に発表した調査によると、白内障手術を受けた人は、白内障を治療せずに放置した人よりも、認知症を発症する可能性が約30%低いことが明らかになりました。
ワシントン大学医学部准教授で眼科の主任研究員であるセシリア・リー博士ら研究陣は、65歳以上の3,038人を対象に長期間の追跡調査を行っています。参加者は、研究開始時には認知症ではなく、認知症が発症する前に白内障と診断されていました。調査期間中、853人の被験者が認知症を発症しました。そして参加者の約半数(1,382名)が白内障手術を受けています。
認知症発症のリスクを分析したところ、白内障手術を受けた参加者は、手術を受けなかった参加者と比較して認知症発症のリスクが約30%低いことがわかったのです。
また、診断から5年以内に白内障手術をするほうが、5年後に手術をする場合よりも、認知症リスクの軽減に効果的であることもわかりました。
研究者は、白内障手術をすることが認知症のリスクを減らすのに役立つ理由をまだ特定していませんが、白内障手術をすると、人々の視力が回復し、視覚刺激の増加が脳の活動を維持するのに役立つためだと考えています。
つまり視力の改善で、目からさまざまな情報が入りやすくなり、脳を刺激。記憶力や認知機能が改善され、気持ちが前向きになり認知症の予防につながることが考えられるのです。
白内障についておさらいしよう。
白内障とは、レンズの役割をする目のなかの水晶体が濁ってくる病気のことです。
目の構造はカメラによく似ています。カメラのレンズに相当するのが、目の表面の黒目(角膜)と水晶体です。目に入ってきた光は、角膜と水晶体で屈折し、フィルムに相当する網膜上に像を結びます。その情報が視神経を伝わって脳に送られると、ものを見ることができます。
本来、水晶体は透明なのですが、加齢に伴って、タンパク質が変性しだんだんと濁っていくのです。水晶体が濁ると光の一部が遮られたり、光の散乱などが起こります。そのため、白内障になると、かすんで見える、まぶしい、二重三重に見える、薄暗い場所では細かい文字が見えにくいといった症状が現れます。
白内障は片方の目からはじまることもありますが、ほとんどの場合、程度の差はあっても両眼に起こってきます。
公益財団法人日本医療機能評価機構が公開している「白内障診療ガイドライン」によると、水晶体の混濁(いろいろな物が混じって濁ること)は加齢に伴って増加し、初期混濁は早い例では50歳代から発症。 初期混濁を含めた有所見率(何らかの異常が認められた率)は50歳代で37~54%、60歳代で66~83%、70歳代で84~97%、80歳以上で100%でした。 つまり、白内障は避けられない目の病気なのです。女性は、男性に比べ白内障の罹患率が高いとしています。
なぜ、白内障の手術を受けると、認知症発症リスクが下がるのか?
白内障の手術では、まず光の通路を取り戻すために濁った水晶体を取り除きます。取り除いた後に主にアクリル製のやわらかな眼内レンズを移植します。つまり、手術により「濁っていないレンズ」に交換するのです。「白内障診療ガイドライン」では、白内障手術は眼局所および全身に障害がなければ約95%の症例で0.5以上の視力を得る、としています。
先に紹介した通り、白内障手術することが認知症のリスクを減らすのに役立つ理由はまだ特定されていませんが、推測はできます。人間は情報の約8割を目から得ており、目が濁って「情報入手」に支障がでると脳に与える影響は決して少なくないといえます。
白内障になると、水晶体の光の透過性が落ちるため、ものがかすんだように見えて、なんとなくすっきり見えない、ピントが合いにくいといった症状がみられます。また、ものがダブって見える人も多いのです。視力が1.0あっても、物が二重、三重に見えるのです。色が薄く見えたり、暗い場所で見づらいなど……。
見えづらくなると、出歩くのが億劫になり、外出の機会が減り、人とも会わなくなります。また、夜間の対向車のヘッドライトが怖くて運転できなくなり、行動範囲を著しく狭めることになります。
さらに、白内障があると、ブルーライト(青色光 / 短波長光)をさえぎることにもなります。ブルーライトは、睡眠パターンの調整、日中の覚醒と警戒の維持、記憶力と認知機能の向上、気分の改善など、健康上で多くの利点がある光なのです。青い光が多すぎると眼精疲労につながりますが、十分でない場合も同様に有害なのです。
具体的には、網膜の細胞の中には青色や紫色の光を感知することで「体内時計」の役割を果たす細胞があります。白内障によってブルーライトが網膜まで届かないと、1日の体内リズムが崩れ、日常生活に異常をきたし、認知症につながるのでは、という仮説もあるのです。
白内障手術を受けることで、人々は青い光の認知的利点を回復することができるのです。
認知症は治療法がないため、発症を遅らせることが重要。
ワシントン大学医学部の眼科准教授である主任研究員のセシリア・リー博士は、
「この種の証拠は、疫学で得られるのと同じくらい優れています。高齢者の認知症リスクの軽減とこれほど強い関連性を示した医学的介入研究は他にないため、これは本当にエキサイティングです」
と語っています。
※介入研究=疾病と因果関係があると考えられる要因に積極的に介入して、新しい治療法や予防法を試し、従来の治療法・予防法を行うグループと比較して、その有効性を検証する研究手法。
認知症は世界中で5,000万人近くに影響を及ぼしています。現在、治療法がないため、認知症の発症を遅らせる、またはリスクを減らす努力がますます重要になっています。白内障かな、と感じたらできるだけ早く眼科医に相談されることが、認知症予防にもつながります。
白内障の自己診断テスト
●片目ずつで見る。
白内障は片目から進行する場合と、両目ともに進行する場合があります。片目のみの進行では視力の低下に気がつかない場合があります。日頃よく使う「効き目」が問題なく見えていると、もう一方の目が見えにくくなっていることに気づかないケースが意外に多いそうです。時々、左右の目を交互に隠して、見え方を確認しましょう。
●明るい場所や日差しの強い場所にいると、とてもまぶしく感じる。
水晶体の濁りが瞳の中心にかかると、光が反射することでまぶしさを感じます。とくに屋外や逆光の状態、夜間ライトのまぶしさを強く感じます。
●目がかすんで疲れやすい(霧がかったように見える)。
白内障の一般的な症状は、視界がすりガラスを通したようにかすんで見えます。最も白内障の頻度が多い皮質白内障でみられます。
※上記は一例です。もっと知りたい方は、「日本白内障学会」ではQ&A方式での白内障自己診断テストを公開していますので、覗いてみては。
▶︎白内障自己診断テストはこちらをクリック
白内障予防のためにも超音波治療器をオススメ。
それは「房水』です。
眼圧によって目の形が丸く保たれていますが、その眼圧をコントロールするのが房水(ぼうすい)という透明な液体です。毛様体(もうようたい)でつくられています。角膜と水晶体の間を流れて、最終的には角膜と虹彩(こうさい)の間の隅角(ぐうかく)で濾過され、眼外の血管へ流れていくという定まった経路で循環しています。
房水の流れイラスト。房水は毛様体(もうようたい)でつくられ、水晶体や角膜に酸素と栄養を供給します。
房水には、この働きのほか、重要な役割があります。水晶体や角膜に酸素と栄養を供給しているのです。
「房水」の流れが滞れば、水晶体に栄養・酸素が行き渡らず、老化も早まります。
そこで登場するのが超音波治療器です。超音波治療器の臨床実験では
眼球内を満たし、循環している房水の流出抵抗が弱まります。超音波により「毛様体」の柔軟性がよみがえるため、房水が出やすくなるのです。加えて、新鮮な房水を生み出す能力も増加します。
と、報告されています。つまり、超音波を目に投射することで、水晶体に栄養・酸素が行き渡って元気を取り戻すのです。