ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切

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ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切

    《ページ目次》下の項目をクリックするとジャンプします。
    1. 週1、2回の8,000歩のウォーキングでも「死亡率が低下」と京大などのチームが発表。
    2. まず、歩くと頭が良くなるという、理由を詳しく紹介。
    3. 血流は、歩くことでよくなる。
    4. 歩行は脳を刺激し、人生を変える。
    5. 認知症を防ぐには「歩きながら計算」で、頭も体操させる。
    6. 不眠症は、歩くだけで解消される。
    7. 歩くことで、うつ病からも解放される。

    週1、2回の8,000歩ウォーキングでも「死亡率が低下」と、京大などのチームが発表。

    週1、2回の8,000歩のウォーキングでも「死亡率が低下」と、京大などのチームが発表。

    ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切

    ウォーキングには驚くほどの効果があります。高齢者ほど健康のために歩くことが大切なのです。
    自分の体力にあわせて毎日、1万歩とか、8千歩とか歩いている人は、まず脳が健康になります。脳が変われば、思考のクセが変わって、人生が豊かになります。歩くと頭が良くなるのです。
    また、ウォーキングは、健康寿命を延ばすという点からもとても大事です。

    介護が必要となる原因で一番多い疾患は、脳卒中で、次が認知症です。脳卒中は、血管が老化して動脈硬化が進行して起こります。血管の老化は、加齢が一因ですが、何より血管の老化を早めるのは、高血圧、糖尿病、肥満など、歩かないことで起こる病気なのです。

    認知症も脳卒中も、よく歩く人はなりにくく、あまり歩かない人のほうがなりやすい。
    ちなみに、要介護になる3番目の原因は、老衰。自然な老化なので、対応のしようがありません。

    週1、2回の8,000歩ウォーキングでも「死亡率が低下」と、京大などのチームが発表。

    ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切
    週1、2回の8,000歩以上のウォーキングでも10年後の「死亡率が低下」と京大などのチームが発表。

    京都大学大学院医学研究科の井上浩輔 助教(社会疫学)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の津川友介 准教授(医療政策学)らの研究グループは、米国の国民健康栄養調査データを用いて、週に1日または2日だけでも1日あたり8,000歩のウォーキングをすることで健康に良い影響が得られることを明らかにしています。

    研究成果は、国際学術誌「JAMA Network Open」(オンライン)に、2023年3月29日(水)に公開されました。

    この調査では、20歳以上の男女3,101人(平均50.5歳)の歩数や年齢、性別、病歴などと、10年後に心筋梗塞こうそくや脳梗塞などで死亡する確率を解析。その結果、1日8,000歩以上を週1日も歩かない人に比べ、週1~2日歩く人の10年後の死亡率は14.9%低く、週3~7日歩く人で低下した死亡率(16.5%)と、ほぼ同じでした。歩数などの条件を変えて比べても「週1~2日、1日8,000歩」の健康への効果は「週3~7日、1日1万歩」と同等で、逆に6,000歩を超える日がまったくないと死亡率は大きく上昇しました。

    この結果は、週に1〜2日程度でも1日8,000歩の目標歩数を達成することが健康によい影響をもたらす可能性を示唆してます。

    運動の時間を確保できない人や、仕事で定期的な運動が難しい人でも、週に数日間だけ8,000歩のウォーキングする習慣を取り入れることで健康リスクを低減できる可能性があります。時間にゆとりのない働く世代や高齢者には朗報なのではないでしょうか。

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    まず、歩くと頭が良くなるという、理由を詳しく紹介。

    脳が衰える理由の一番は、ハッキリしていて、脳に届く酸素の量が減ること。

    呼吸によって体内に取り入れた酸素は、血液の流れにのり、頭をはじめとした全身に運ばれます。心臓から送り出された血液のうち、脳には全体の約15%(安静時)が流れ込みます。脳は、きわめて酸素不足に弱い組織ですから、血流量が減少すると意識や気力の低下、立ちくらみ、めまいが起こります。

    逆にいうと、脳に届く酸素の量を増やすためには、

    ①酸素を体内に取り入れる力を高めること。
    ②血流をよくすること。

    です。
    最大酸素摂取量という言葉があります。人が体内に取り込むことのできる酸素の1分間あたりの最大量のことです。一般的に20歳頃がピークで、その後、年を重ねるにつれて降下していくそうです。

    もちろん、ウォーキングやジョギング、エアロビクス、サイクリング、水泳など、長時間継続しておこなう有酸素運動をしている人と、していない人では差がでます。歩く習慣のある人は、酸素を取り入れる力も鍛えられるので、脳に届く酸素量も増え、脳の衰えをゆるやかにすることができるのです。

    ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切

    歩くことの作用と効果

    ①集中力・判断力・記憶力などが向上。
    歩くと血流がよくなり、酸素がたっぷり脳細胞にいきわたる。そして、脳全体のなかで、集中力などを司る前葉頭と、記憶力などを司る海馬への血流量が増え、その機能が向上する。
    ②動脈硬化、脳疾患(認知症など)の予防に。
    歩くことで、血流量が増えると、血管の形成を促す糖タンパク「VEGF」が盛んに生成され、その結果、動脈硬化を防ぐ効果がもたらされ、脳梗塞・認知症などのリスクが減る。
    ③転倒予防、バランス感覚の向上など。
    脚は筋肉量が多く、神経が集中していることから、歩くことで足からの刺激が、空間認識や身体認識を司る頭頂葉へと伝わる。継続的に歩くことで、頭頂葉を鍛えることになる。

    血流は、歩くことでよくなる。

    血液が心臓を出て全身に至り、毛細血管を経て再び心臓に戻ってくる循環を体循環といいます。1周する時間は約20秒です。健康な心臓が1日に送り出す血液量はドラム缶40本分にもなります。

    この体循環で、心臓から最も遠い足から心臓に戻るには、重力に逆らって血液を下から上へと送り出す必要があります。その時、血流を押し戻すのを手伝ってくれるのが筋肉です。

    ふくらはぎの筋肉は「第2の心臓」といわれ、重力によって下半身にたまった血液を心臓に戻すポンプの働きをしています。歩くと、ふくらはぎの筋肉を使うことになり、血液を下から上へと送り出すのを手伝ってくれ、血流がよくなるのです。歩くことこそ、血流をよくする最大の方法なのです。

    カナダ生まれの著名な内科医ウィリアム・オスラー卿の遺された人は血管とともに老いるという名言と無縁ではありません。

    ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切

    歩行は脳を刺激し、人生を変える。

    また、歩くと頭が良くなる理由として、手や足、目や耳といった部位は、そこから得た情報を脳に伝え、脳の指令を受けて動く、脳の出先機関ともいえます。逆に考えると、脳の出先機関である手や足を動かすことは、脳を刺激することにもなるのです。

    さらに、歩くという行為は、移動することですから、目や耳、鼻から新しい刺激が入り、脳が活性化します。

    実際、手足を使うと、脳内の神経細胞が刺激され、神経細胞からシナプスと呼ばれるつなぎ目が伸びて別の神経細胞につながり、新しい回路がつくられます。これが歩くことで、頭のよくなる理由なのです。

    車椅子生活になっても、家に引きこもっていては、変化のない生活になり、脳への刺激が減ってしますます。移動することで、日差しや風、子どもたちの声、四季折々の花の香りなど、色々な刺激を受けることになるのです。

    「膝が痛いから歩けない」「腰が痛いから歩けない」という人がいます。年齢を重ねると、膝や腰など、どこかが悪くなる方がほとんど。それを理由にして、安静にして歩かないでいると、体は弱まるばかり。膝や腰が痛くても、サポーターやコルセットなど補助してくれるものをつけたりし、できるだけ歩くこと。自分の体調に合わせて、無理をしない範囲で歩くことが大切なのです。

    認知症を防ぐには「歩きながら計算」で、頭も体操させる。

    ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切

    内閣府の報告だと、2020年の65歳以上の高齢者における認知症の頻度(有病率)は約16%、高齢者人口に当てはめてみると約600万人の高齢者が認知症になると推定されています。

    さらに認知症の前の段階である「軽度認知障害」(MCIと呼ばれる)の方はおおよそ400万人いるとの推定もあり、認知症の予防が国の重要な課題となっています。

    MCIは認知症と違って、認知機能が以前の状態から大きく低下していないこと、また日常生活に支障がない、もしくは努力や工夫でなんとか自立できている状態のことです。もの忘れやこれまでの様子と比べなにかおかしいが、まだ認知症とはいえない状態のことで、いわゆる「認知症の疑い」の段階となります。

    MCIの予防策について、科学的な裏付けがある方法として、多くの施設で導入が始まっているのがデュアルタスク(二つの課題を同時に課すことを指す学術用語)です。

    国立長寿医療研究センターなどが研究を進めてきたもので、頭と体の課題など2つのことを同時に行うエクササイズです。歩きながら計算するというふうに、何か体を動かす作業をしながら、頭を使うことがポイントになります。

    MIC予防でもっとも必要とされるのが運動で、少なくとも2日に1回は30分以上の散歩をすることが推奨されています。さらに、◯◯しながら運動するのが効果的だそうです。

    ● ウォーキングしながら引き算 
    歩きながら、100から3ずつ引いていく引き算を行います。
    ・ 計算は7ずつの引き算や足し算などにかえてもいいでしょう。
    ・ 他の簡単な運動に変えても構いません。

    ● ウォーキングしながらとしりとり
    ・ ウォーキングを行いながらしりとりを行います。
    ・ ご夫婦やグループで行っても良いでしょう。
    ・ 花の名前、魚の名前、県名などお互いに課題をだしあいながら歩くこともよいでしょう。

    ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切
    平成29年版高齢社会白書(概要版)より

    不眠症は、歩くだけで解消される。

    ウォーキング効果。高齢者ほど健康のために歩くことが大切

    睡眠不足は、糖尿病や肥満、心臓病、さらにはがんのリスクをあげるといわれています。

    睡眠時間と寿命も関連があり、睡眠7時間が一番長生きするというデータもあります。
    よい睡眠時間を持つには、昼間、少しでも歩くことが大切。とくに高齢者の場合、昼間の活動量が少ないために、夜眠くならないという人が結構いるのです。

    不眠症解消で歩く場合、午前中のうちに歩くのがオススメ。朝日を浴びると、体内時計がリセットされ、夜になると脈拍、体温、血圧が下がって自然な眠りに入っていくのです。そして、適度な疲れが、夜に眠気をもたらしてくれます。
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    歩くことで、うつ病からも解放される。

    うつ病は、脳内の「セロトニン」や「ノルアドレナリン」というホルモンが不足した状態。歩けば、これらホルモンが増えるのです。

    抗うつ剤を使っている人は、1日に5分、10分でも歩く気力が出てきたら、薬を徐々に減らして、最終的には歩くことだけにしてゆく。初期のうつ病であれば3カ月で克服できるそうです。

    なぜ、3カ月なのか?  うつ病の原因ともいえる「セロトニン」や「ノルアドレナリン」は、分泌量が多くなりすぎると、それに抑制をかけるオートセレプター(自己受容体)というものが備わっています。このオートセレプターの発現をオフに切り替えるのに3カ月を要するからです。だからこそ、歩くことを3カ月は続けることが大事なのです。

    歩けば歩くほど、生活習慣病はよくなります。高齢者ではなくても、歩くことで筋肉や骨が丈夫になれば、年を取ってから膝が痛い、腰が痛いといったことが少なくなります。

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