コロナ禍のなか、子どもの目を守るために親は何に注意すべきか?
コロナ禍の「おうち時間」の増加で、子どもたちの近視が増加。こうした状況のなか、子どもの目を守るために親は何に注意すべきなのか、視力を低下させないためにはどうすればいいのか、を考えてみました。
コロナ禍の「おうち時間」の増加で、子どもたちの目が危ない。
文部科学省「学校保健統計調査-令和3年度(確定値)の結果の概要」より
2019年12月コロナウィルス感染症が中国および世界中に急速に広まりました。
COVID-19の流行を受けて、6~8歳の子供を対象としたコロナウイルスによる自宅軟禁後の調査で、近視の増加が認められました。近視の有病率は、過去5年間と比較して2020年に1.4から3倍に増加しているのです。また、英国では、10~16歳の子どもにおける近視の有病率は過去50年間で2倍以上になり、子どもはより若い年齢で近視になりつつあります。
日本では、毎年、行われている「学校保健統計調査」が、コロナ禍の影響で2020年度、2021年度とも、従来と測定時期が違ったりしたため過去のデータと単純に比較できません。が、2022年7月13日に発表された文部科学省の2021年度の学校保健統計調査(速報値)によると小・中学生、高校生のいずれもが、視力が1.0未満で、過去最悪となったことがわかっています。
この調査は2020年4~2021年3月まで、5歳から17歳までのおよそ333万人を抽出して行われました。これによると、裸眼の視力が1.0未満の小学生は36.87%、中学生は60.28、高校生は64.41%で、中学生の割合は過去最悪を更新しています。
さらにメガネやコンタクトにより視力矯正が必要な「裸眼視力0.3未満の者」の割合でも、幼稚園0.64%、小学生10.64%、中学生28.23%、高校生33.18%となっていて、中学生は過去最悪となっています。
コロナ禍でスマートフォンやタブレット端末を見る機会が増えており、その影響は無視できません。
COVID-19のパンデミックにより学校が閉鎖されたり、遠隔教育に切り替えられたとき、多くの子どもたちは屋内にとどまり、自宅学習とかタブレット学習などのクローズアップ作業によりスクリーンを間近で見つめることを、これまで以上に長く費やすことになりました。多くの子どもたちは、学校と遊びの両方でデバイスを使用しています。
これにより子どもの視力に多くの問題を引き起こしているのです。近視がもっとも進行しやすいは、実は7歳から11歳までで、子どもは視力が低下しても文句をいわないことがあるため、兆候に注意することが重要なのです。
※デバイスとは、装置や機械のこと。 特定の機能を持つ道具を英語でデバイスといい、転じて電子部品やパソコンの周辺機器、スマートフォンのように単体で機能を持つ電子機器や端末を総称してデバイスと呼ぶようになった。
長時間、近くを見続けることで様々な症状が現れる。
こうしたコロナ禍のなか、親は何に注意すべきか、視力を低下させないためにはどうすればいいのか、どうすれば助けることができるかを考えたり調べたりしてください。
近視の上昇、さらに、すでに近視であった一部の子どもたちも、予想よりも速い速度で視力の悪化を経験しているようです。中国は、COVID-19後の近視症例の増加の可能性を報告しました。
近視の進行を予防、視力を維持することはとても重要です。なぜなら、視力低下は、白内障や緑内障など、後年、より深刻な眼の問題を引き起こす可能性があるからです。また、視覚系が適切に発達するのを妨げ、後年の永続的な問題につながる可能性があります。さらに、ゲームやスマホはしすぎると、近視はもちろん、黒目が内側に向いて「斜視」の原因にもなるのです。
ドライアイと頭痛は、スマートフォン、ラップトップ、タブレットを長時間見つめることの一般的な副作用です。子どもと大人がデジタルデバイスを使用するとき、私たちはまばたきが少なくなる傾向があり、湿気が目の表面を滑らかにするのを邪魔するのです。
近くのものを見続けると目の緊張が続き、倦怠感、痛み、または乾燥を感じます。目の乾燥は、目のなかや周りの炎症、かすみ目、さらには過度の涙として現れることがあります。眼精疲労による頭痛は、ほとんどの場合、一日の終わりに起こります。
コロナ禍でさらにデジタル化が進むなか、子どもの目を守る方法とは。
コロナ禍のなか、子どもの目の健康を守るためには、次の4つのことを優先しましょう。子どもの毎日のルーチンのいくつかの変更は、近視の抑制、目の乾燥、痛みを伴う目を軽減するのに役立つはずです。
※ルーチンは、「決まった手順」「お決まりの所作」「日課」などの意味の英語。
①より大きな画面を使用して、子どもの目から遠くに配置します。
目のごろつき、痛み、白目の充血が起こります。涙もたくさん出ますが、目やにはあまり出ません。
角膜を保護する「上皮」がはがれ落ちた状態を「びらん」といいます。角膜の表面を浅くすりむいた状態と考えてもらえればよいでしょう。皮膚と違って角膜には血管はなく、角膜びらんでは出血しません。コンタクトレンズ装用による酸素不足などが原因とされています。点眼や眼軟膏(なんこう)を塗布するなどの治療によって数日で回復する場合が多いのでが、再発性角膜上皮剥離へ移行する可能性もあります。
②20-20-20ルールに従ってください。
20-20-20ルールは、パソコンやタブレット端末、スマホなどのデジタル画面を20分見たら、20秒間20フィート(6メートル)以上離れたものを見て休憩するというもの。20秒の休憩中に窓の外を見ましょう。これにより視力低下や眼精疲労などを防げるのです。
目を休めている間は、席を立ってコップ一杯の水分を取り、水分を補給しておくこともおすすめ。デスクから離れ、自宅のすべての部屋を巡回させることもいいでしょう。窓の外を見るときは、予め決めた5つの目標物を順番に見るようにしてもよいでしょう。
デスクにキッチンタイマーなどを置けば、20分ごとに休憩をとるのに役立ちます。
また、1日少なくとも1時間外に出てください。理想は1日2時間外に出ましょう。運動は子どもたちの目をデジタル機器から離れさせます。さまざまな距離に焦点を合わせ、日光の下にいるチャンスです。多くの研究が、屋外で過ごす時間が多いほど近視のリスク低下につながることを発表しています。
詳細はこちら▶︎「視力低下や眼精疲労を防げる「20-20-20 ルールとは?」
③子どものデジタル画面に付箋を貼って、まばたきすることを促します。
モニター画面を見続けるので瞬きの回数が減ります。涙はまばたきの刺激によって出るので、その回数が減れば自然に涙の量も減ることになるわけです。
まばたきの回数は、通常の人なら1分間に平均21回。3秒に一度はまばたきしている計算です。これによって目が乾燥するのを守っています。意識してまばたきをすることを習慣づけましよう。
④夜、ブルーライトを浴びると寝つきが悪くなり、睡眠不足になります。
パソコンのバックライトの光量を調節しましょう。LEDディスプレイの「色温度」と「輝度」を下げることで、画面からの強いブルーライトをかなりカットできます。目の疲れを軽減します。
夜も明るい環境や、夜遅くまでパソコンやスマホなどのLEDディスプレイでブルーライトを浴びる生活は、体内時計を乱れさせ、自律神経系や内分泌系、免疫系にも悪影響を及ぼします。寝付きが悪い、眠りが浅いといった「睡眠の質を低下」も、そのひとつでしょう。
就寝時刻の1時間前にはデバイスの電源を切ることを習慣化させましょう。
定期的に眼科医を訪ねることも大事です。よい視力は、子どもの身体的発達、学校での成功、そして全体的な幸福の“鍵”です。お子さんに障害の兆候や視力の問題が疑われる場合は、すぐに眼科医を訪ねて相談しましょう。