いま、外出時に必需品となっている「マスク」。
ところが、テレビを見ると、マスクは感染者が装着した場合、呼気や咳などで菌が飛散することを抑える効果はあるが、感染していない健康な人がマスクをしても感染源が体内に侵入するのを防ぐ効果がない、と医療関係者がいうシーンをよく目にします
ええーっ? これはどういうこと?
では、自分が感染していないと自信のある人は、マスクをしてもしなくても同じことなの。しかし、よく考えると、医療現場ではみんなマスクをしています。これは、どうして? ? 謎だらけです。
世間では、店頭からマスクが消え、困惑している人が大勢います。ネットでは手作りマスクが話題になっています。
テレビに登場している医療関係者は、なぜ、あんな発言をしているのでしょうか? それなのになぜ、医療現場ではマスクをしているのでしょうか?
TVで医療関係者がマスクをしても「感染を防ぐ効果がない」という理由は。
実は、ちゃんとた理由があったのです。
食器、時計、便利グッズ、文房具など、これらは日常生活に必要な日用品です。総称して「雑貨」といいます。
実は、私たちが着用している一般的な「マスク」は、日本では「雑貨」扱いなのです。医療用具ではありません。
かぜなどの咳やクシャミの飛沫の飛散を抑制することを目的に使用される雑貨なのです。
だから性能についての検定規格がありません。極端にいうと、普通の布をマスクの形状にして、マスクとして販売しても、まったく問題ないということです。
雑貨なんだから、効能効果があるわけがない。だから、感染源が体内に侵入するのを防ぐ効果がない、と医療関係者がいうわけです。
サージカルマスクって知っていますか?
では、医療関係者がしているマスクも意味がないの? と思われるはず。実は、同じ形状のマスクでも、医療関係者がしているマスクはサージカルマスクといわれるものなのです。
「サージカル(surgical)」は「外科の、手術の」という意味を持ち、広義の意味で、主に医療現場もしくは医療用に使用されているマスクを指します。そうです、「サージカルマスク」はアメリカが定める基準をクリアした高性能マスクのことなのです。
アメリカで医療機器、医薬品、食品、化粧品、放射線発生機器等の販売・市場進出を果たすためには必ずFDA(米国食品医薬品局規制)に対応していることが求められます。FDAでは、医療用マスク「サージカルマスク」の基準をBFE(殺菌ろ過効率)95%以上と規定しています。
BFEとは、マスクによって細菌を含む4 ~ 5 μ m の粒子が除去された割合をパーセントで表し、着用者の咳やくしゃみの飛沫遮断性を示しています。
サージカルマスクの着用目的は、次の二つ。
1.着用者の呼気に含まれる微生物による感染から患者を防御する(着用者側からの遮断性)
2.患者の体液(呼吸器からの飛沫など)や血液飛散から、着用者を防御する。
日本ではアメリカと違い、法的なサージカルマスクの呼称や性能に対する規定がないのです。だから、混同されているのです。
日本で販売されている一般のマスクは、雑貨になっているため、性能も機能もピンからキリまで、千差万別。FDAの基準をクリアしたBFE(殺菌ろ過効率)99%以上のものもあります。
もちろん、「サージカルマスク」だからといって、完全に感染源から着用者を守るというわけでもないようです。医療用マスクとしては「サージカルマスク」以外にも高性能のN95レスピレーター、サージカルN95レスピレーターなどがあり、高額なようです。
消費者としては、マスクであればなんでもいい、ではなく性能が書かれているパッケージの仕様をよく読んだり、ネットでの評価を気にしたりして、購入の判断をしたいもの。
マスク選びの基本ポイントは。
2009年11月18日に公表されている国民生活センターのサイトを見ると
マスクの需要が増加しているが、最近では「ウイルス99%カット」など、ウイルス対策をうたった商品が多く見受けられる。
とあります。しかし
ウイルス対策をうたったマスク15銘柄(プリーツ型9銘柄、立体型6銘柄)を対象に、マスクのフィルター部の性能や着用時にできる顔とマスクの隙間から空気がどの程度漏れるのか等を調べ、消費者に情報提供することとした。
【主なテスト結果等】
1. フィルターの捕集効率
ウイルス対策をうたっているにもかかわらず、フィルターの捕集効率が低いものがあった。さらに、N95マスクの基準を満たしていると受け取れる表記があっても、捕集効率が80%以下のものが3銘柄あり、消費者が誤認するおそれがあった。
2. 着用時の顔とマスクの間からの空気の漏れ
すべての銘柄で平均漏れ率が40%以上であった。また、フィルターの捕集効率が高いものでも、顔との隙間からの漏れがあるため、ウイルス等の微粒子を完全に遮断することはできない。
3. 使用感
どの銘柄も鼻の辺りは半数以上の人が隙間があると回答した。また、プリーツ型ではさらに頬の部分にもできやすかった。
漏れ率が小さいものは、息苦しい。
4. 表示
全ての銘柄でウイルス対策をうたっていたが、フィルターの捕集効率が低いものがあった。また、全ての銘柄で隙間からの漏れがありウイルス等の微粒子を完全には遮断できないと考えられるため、消費者にマスクの効果を過信させるおそれがあった。
「99.9%」など捕集効率と思われる表記が目立つように記載されていたが、捕集対象はウイルス、ウイルス飛沫、バクテリアなど粒子の大きさが異なるものであった。
3銘柄でN95マスクの基準を満たしているかのような表記があったにもかかわらず、捕集効率が80%以下と低かった。また、1銘柄でインターネット上の広告にあった「N95規格相当」の表示がパッケージにはなかった。
15銘柄中6銘柄で着用方法に関する表示がなかった。
上記の「主なテスト結果等」を踏まえて、マスク選びの基本ポイントを考えてみました。
- フィルターの捕集効率が99%以上のもの。
- 着用時の顔とマスクの間からの空気の漏れがないもの。漏れがあると、隙間からウイルス等の微粒子が体に入り、マスクをしている意味がなくなる。
- 漏れ率が小さいものは息苦しくなるが、できるだけそうならないものを選ぶ。マスクをしていても、鼻の下にずらしている人を見かけるが、これがその典型。これでは意味がない。
感染源から自分を守るという観点からマスクを使用するなら、マスクに関する知識を増やして、いろいろ試して見て、自分に合うものを探すことが、一番大切のようです。